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㊽米粉のクッキーとラングドシャ-5-
しおりを挟むバジリスクは魔物だから鶏と比べるのはおかしいと分かっているが、目の前にある肉は薄いピンク色だけを見れば鶏肉そのものだ。
但し、肉の部分は鶏肉より大きくて厚いが───。
「改めて見ると・・・大きいわね」
冷蔵ボックスからバジリスクの肉を取り出した紗雪は思わず声を上げる。
(今は作る方が先ね)
包丁を手にした紗雪はバジリスクの胸肉に当たる部分の皮を取り除いて削ぎ切りに切った後、綿棒で叩く。これは肉を薄く伸ばす為のものだ。
(これくらいでいいかな?)
麺棒で叩いて薄く伸ばしたバジリスクの肉の両面に塩と胡椒を振って下味をつける。
「レイモンド、パン粉はあるかしら?」
「ああ、ちゃんと作っている」
「ありがとう、レイモンド」
紗雪がバジリスクの肉を冷蔵ボックスから取り出している頃にミキサーで作っておいたパン粉をレイモンドが彼女に渡す。
下味をつけたバジリスクの肉に米粉、卵液、パン粉を塗すと、コンロの上に置いたフライパンにオリーブオイルをひいた。
中火で熱したフライパンにバジリスクの肉を置いて片面を焼く事数分
フライ返しで肉を少し上げて見ると、焼き色が付いていたので焼けていない面を焼く為に裏返す。
「レイモンド、バジリスクのカツレツが出来たわ」
「こっちもマーマレードで作ったソースが出来た」
紗雪が皿に盛り付けたバジリスクのカツレツにレイモンドがオレンジのマーマレードで作ったソースをかける。
「レイモンド。オレンジのマーマレードって肉と合うの?」
「ああ。今回はマーマレードを使ったが、ジャムも肉のソースとして相性がいいんだ」
そう言ったレイモンドは皿に盛り付けているバジリスクのカツレツをフォークとナイフで一口大にカットすると、それを紗雪に食べさせる。
(!?)
「美味しい・・・。衣はサクサクとしているのに軽い口当たり。この食感と弾力は・・・デパートや百貨店で売っている高級ブランドの鶏肉そのものだわ!」
マーマレードの甘味と爽やかさ、ピリッとした胡椒、肉の旨味とコクが一つになって食を進めるのね
一口では足りないと言わんばかりの笑みを浮かべて紗雪はバジリスクの肉を咀嚼していく。
「マーマレードって肉にも使えるのね。勉強になったわ」
(これ、ユグドラシルが店舗になった時のメニューに入れてもいいかも。でも、バジリスクの肉は高級食材だから難しいわね。・・・そうだ!バジリスクの肉が手に入った時だけの限定メニューとして出せば・・・)
「皆さんも食べてみて下さい」
紗雪の笑みを見て食べたいと思っていた料理人達は厨房にあるナイフでカットしたバジリスクのカツレツを食べていく。
「これは自分達が知っているカツレツと違って軽い感じがします」
「カツレツは牛肉で作るものだとばかり思っていました」
味見をした料理人達が、紗雪の作った料理の感想を述べる。
「今回はバジリスクの肉を使いましたが、鶏肉でも作れます?」
「ええ。カツレツは牛肉が一般的だけど、鶏肉や豚肉、鹿肉でも作る事が出来るわね」
「紗雪に質問するのはそれくらいにして、皆も手伝ってくれないか?」
レイモンドの言葉に従い料理人達はバジリスクのカツレツ作りに取り掛かり始める。
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