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㊼ベーグルとワイバーンのホワイトシチュー-2-
しおりを挟む「レイモンド・・・?紗雪殿・・・?」
「その殿方は・・・どなたなのかしら?」
(こ、この人からは大魔王っぽいオーラを感じるわね・・・)
何の前触れもなくロードクロイツ邸にやって来た訪問客にランスロットとエレオノーラ、そして美奈子は顔を引き攣らせる。
ランスロットとエレオノーラは高位貴族の子女として育ってきたので心の内ではどう思っていてもアルカイックスマイルで取り繕う事が出来るのだが、目の前に大魔王な威厳とオーラを纏っている筋骨隆々の大男が登場したのであればそうはいかない。
「お二人はロードクロイツの領主と夫人、そしてそこの老女は領主殿のご母堂とみてよろしいか?突然の訪問、失礼致す。儂はクリストフ。プルメリア島を治める者と言えば分かるであろうか?」
プルメリア島といえばバニラとショコラの産地だ。
そして───。
「私はロードクロイツを治めるランスロット、彼女は妻のエレオノーラ。そして私の母である美奈子。ダークエルフの長よ、我等はクリストフ陛下の訪問を心より歓迎する」
見た目が大魔王である男が何者なのかを察したランスロットとエレオノーラと美奈子は、クリストフにボウ・アンド・スクレープとカーテシーをする事で敬意と歓迎の意を示す。
「ロードクロイツ卿、貴殿の心遣いに感謝する」
クリストフもまた三人の気遣いに感謝の言葉を口にする。
「ところでクリストフ陛下。共も連れずにロードクロイツを訪れたのは何故?」
うむ
「それはじゃな・・・レイモンド殿とサユキ嬢が作った異世界の料理が食べたい事と、米でパンと菓子を作って欲しいからじゃ!!」
「「米でパンと菓子を作る!?」」
ちなみに米は挽いて粉にしたものを持って来ている
パンは小麦粉で作るものだと思っているランスロットとエレオノーラは、思ってもいなかったクリストフの依頼に驚きの声を上げる。
「サユキさん、異世界では米で作ったパンとお菓子があるの?」
「はい、ありますよ。ただ、日本にいた頃の私は米からパンとお菓子を作った事がないので、クリストフ陛下が思い描いているようなパンが出来るかどうか・・・」
米粉で作ったパンとお菓子を食べた事があっても作った事はないものだから、紗雪は思わず不安を口にしてしまう。
「米粉のパン・・・私が日本にいた頃はそんなものなかったわ」
新しい食べ物が生まれているのね~
何か浦島太郎の気分だと、美奈子がボソッと呟く。
「紗雪、米粉のパンと菓子作りは俺も協力する」
「ありがとう、レイモンド」
自分一人だったら難しい問題も二人だったら解決できるので紗雪は素直に礼を口にした。
「米粉でパンと菓子作りよりも、まずは屋台で売るエルフでも食べられるパンを父上達に試食して貰う方が先だ」
「そうね」
「エルフでも食べられるパン?・・・という事は卵と牛乳とバターを使わないパンだと思えばいいのか?」
「はい。今日の夕食は市場で買った魔物の肉と、ベーグル・・・卵と牛乳とバターを使わないパンを出そうと思っています」
「それは楽しみだ」
「ベーグル?今の日本にはそんなパンがあるのね・・・」
(うわ~っ・・・何か物凄く期待されている!?)
紗雪とレイモンドが作る料理に間違いがない事を知っているランスロット達は、期待に満ちた眼差しで二人を見つめる。
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