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㊼ベーグルとワイバーンのホワイトシチュー-1-
しおりを挟む「紗雪、今日は芝居を観に行けなくなって済まない」
「あの女エルフのせいで面白い芝居も楽しめない気分ですもの」
この鬱憤は茶巾絞りと、エルフでも食べられるパンを作って食べた人が喜ぶ顔を見る事で晴らすわ!
「サユキ嬢。エルフでも食べられるパンとはどのようなものなのだ?」
「そうですね・・・卵と牛乳とバターを使わずに作ったパンです。弾力があってもっちりとした食感ですよ」
元の世界ではベーグルと呼ばれているパンで、サンドイッチのようにディッシュを挟んで食べていたと話す。
「単に固いだけのパンではないという事か」
「はい。生地に野菜のペーストを混ぜると違った味が楽しめますよ」
ベーグルの生地に練り込むカボチャと人参、サツマイモを買った紗雪は肉屋に人が集まっている事に気付く。
「どうやら魔物の肉が冒険者ギルドから卸されたみたいだな」
高級な豚肉とでも言うべきオーク肉、淡泊だからこそ色んなアレンジが出来るコカトリスとバジリスクの肉、柔らかくて旨味とコクがあると言われているワイバーンの肉───。
繁殖の為に女を攫うオーク、ダンジョンを徘徊するコカトリスとバジリスク、険しい山に棲むワイバーンは食べる事が出来るのだ。
冒険者達が狩ったら冒険者ギルドは解体した魔物の肉を市場に卸し、肉屋はそれを売るのだと紗雪に教える。
オーク肉とコカトリス肉しか食べた事がないから、紗雪はバジリスクとワイバーンの肉がどのような食感なのか分からないでいる。
紗雪はレイモンドとクリストフに聞いてみる事にした。
「そうだな・・・」
二人の話によると、バジリスクとワイバーンの肉は鶏肉と牛肉のそれぞれいいところを集めた肉なので非常に美味なのだ。そして、当然と言えばいいのか美味であるが故に高級食材である。
「紗雪と出会うまではバジリスクとワイバーンの肉が美味いとは思えなかったが、それは調味料の使い方と調理方法に問題があっただけだという事が分かる。それに、今の俺ならそれぞれの特徴を生かした料理を作れそうな気がする・・・」
「シチュー、カツレツ、ステーキ、ロースト・・・何がいいかな~♪」
「肉と言えば、儂も年を取ったかな~?若い頃はジューシーで『これぞ肉!』と主張する肉を好んだが、今は脂身の少ない方が好みじゃな」
「・・・・・・脂身の少ない肉、か」
牛肉の上位互換とでも言うべきワイバーンの肉であればモモか脛、或いはヒレ部分、鶏肉の上位互換であるコカトリスとバジリスクは胸の部分、オーク肉はヒレ部分を使えばクリストフも食べられるだろうと判断を下す。
異世界風に調理した肉料理が楽しみだと言わんばかりに、魔物の肉を買った三人はロードクロイツ邸に向かうのだった。
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