カフェ・ユグドラシル

白雪の雫

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㊻屋台ユグドラシル、オープン-1-

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 店主たる者、きちんと金銭管理を出来なければならない





 レイモンドはグスタフから店の経営に関するノウハウを実家で教わったり

 己と父の人脈で仕入れ先と契約を交わしたり

 住居兼店舗に向いている土地を探したり

 屋台ひいては来年の春に向けて店のオープンに向けて準備している頃

 紗雪はロスワイゼを通して自分で作ったバニラエッセンスを広めたり

 鶏がらスープや顆粒コンソメといった調味料を作ったり

 接着用品として使われているゼラチンでスイーツを作ったり

 伯爵令嬢として領地を視察したり

 他家の令嬢が主催するお茶会に顔を出したり

 自分がお茶会を主催する事で人脈を築いたりしていた。

 勿論、ネットショップで料理や調味料に関する本を購入した後は改めて料理の勉強をしたり、シュルツベルクの食材で試作する事も忘れない。

 屋台のオープン前日

 「紗雪・・・会いたかった」

 「私も、レイモンドに会いたかった・・・」

 離れていた間の二人は手紙でやり取りはしていたが、こうして顔を合わせるのとではやはり違う。

 人目も憚らずレイモンドはロードクロイツにやって来た紗雪との再会を喜んでいた。

 「紗雪、王都で有名な劇団が「レイモンド・・・婚約者と会えた喜びに浮かれるのは分かるが、明日の屋台が終わってから紗雪殿と芝居を見に行けばいい」

 「「はい・・・」」

 顔を赤くして俯いたレイモンドと紗雪の姿にランスロットは苦笑を浮かべて、エレオノーラは若いっていいわね~という感じで微笑ましく思っていた。

 「明日の屋台でフライドポテトを出すと言っていたけど、屋台の名前は何にするか決まっているの?」

 「いえ。それが・・・」

 【黄金の小麦】や【春のそよ風】という感じで、自然や季節を由来にした名前にしようと思っているのだが、どれもしっくりこないのでまだ決まっていないとレイモンドがエレオノーラの問いに答えた。

 「だったら、ユグドラシルはどう?」

 ランスロット達が居る部屋にやって来た美奈子が、北欧神話に因んだ名前を口にする。

 「私と紗雪さんが住んでいた世界には北欧神話というものがあって、神が住む世界に巨神族が住む世界、人間が住む世界に妖精が住む世界・・・幾つもの世界を内包している大樹をユグドラシルと言うの」

 「世界樹、か・・・」

 紗雪の世界にある料理をキルシュブリューテ王国やプルメリア島の食材で作るという行為は二つの世界を内包しているように思える。

 そして、ランスロット達が作った土壌に紗雪が種を蒔きレイモンドが実らせるという行為は、料理という樹を育てるという事ではないだろうか。

 「ユグドラシル・・・いい名前だわ」

 「そうだな。紗雪、俺達の屋台の・・・店の名前はユグドラシルに決まりだ」





 翌日

 ユグドラシルがオープンした。









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