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㊹ミルクセパレーター-8-
しおりを挟む過去の迷い人のように黒髪黒目という事は、紗雪は異世界人という認識でいいのか?
異世界人なのに、魔力を一切感じないのか?
自分の両親とレイモンド、シュルツベルク伯爵夫妻とどういう関係なのか?
ウィスティリア王国の聖女召喚に巻き込まれただけではなく、異世界人であれば当然のように付与されている魔力がないという理由で追放された事
迷い人であれ、巻き込まれた形であれ、異世界人であれば使えて当然の魔法が使えない理由は分からない事
レイモンドと婚約した事
この世界で生きて行く為にシュルツベルク伯爵夫妻が養父母になった事
ベルンハルトの問いに紗雪は丁寧に答えていった。
(父上と母上は魔法が使えない紗雪殿を弟の婚約者に?)
「紗雪殿。貴女は元の世界では戦いに身を置いていたのだろうか?」
異世界では架空の存在であるゴブリンやオーク、オーガ等といった魔物がフリューリングでは当然のように存在している。
美奈子やマスミをはじめとする平和な世界で生きていた迷い人には、それ等と戦い身を護る力がない。
どういう理屈なのか分からないが、怪物や魔物が蔓延るフリューリングという世界で迷い人が生きて行く為の術───魔法や力を与えられる。そして、その力は強力なもので子孫へと受け継がれていく。
だからこそ為政者達は迷い人を保護するのだが、ランスロットとアルバートは何の力もない紗雪の後見人になっている。
という事は元の世界で冒険者のような立場にあった女性だったのではないかと思ったベルンハルトは、紗雪に『戦いに身を置いていたのか?』と尋ねたのだ。
「ええ。巫女にして退魔師である私は妖怪や悪霊・・・フリューリング風に言えば怪物やアンデット系の魔物と戦っていました」
「成る程・・・」
(アンデット系の魔物と戦える紗雪殿は精霊使いのように霊力を持っている?だから魔法が使えない?)
紗雪本人にも分かっていないのだから、これ以上聞くのは野暮だろうと思ったベルンハルトは異世界の技術や食べ物について尋ねていく。
「そろそろアイスクリームが出来る頃です。ベルンハルト兄上達には俺達が知っている牛乳を凍らせただけの氷菓と、異世界のアイスクリームを試食して貰います」
「異世界のアイスクリームとやらがどのようなものなのか・・・楽しみだな」
「レイモンドとサユキさんの料理の腕は確かだから期待してもいいわよ、ベルンハルト」
私を魅了して止まないあの甘い香りと、舌の上で溶けていく濃厚で滑らかな食感のアイスクリーム♪
「は、母上・・・?」
(これは・・・期待していいのか?)
王都で評判のフライドポテトが不味かったので異世界の料理は激マズだと思っていたベルンハルトであったが、エレオノーラが鼻歌交じりで食堂へと向かう姿を見て少しだけ・・・本当に少しだけ期待に胸を膨らませながら食堂へと向かうのだった。
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