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閑話・子供達の手作り弁当とホットドッグ-1-
しおりを挟む部屋の窓から見えるのは灰色の雲から降り注ぐ雨。
今は雨期という事で、キルシュブリューテ王国は雨の日が続いているのだ。
「王子様は邪悪なドラゴンを倒してお姫様を助けました──・・・」
ぐすっ・・・
「レスティーナ?」
「お外で遊びたい」
「レスティーナ・・・。雨が降っているからお外で遊べないのはレスティーナにしてみれば、とても辛い事だな?」
でも、雨が降らないとレスティーナが大好きなケーキのクリームとスポンジを作る為の乳を出してくれる牛さんが食べる草が育たないんだ
「雨が降るというのは、とても大切な事なんだよ」
自分の膝の上に座らせて本を読み聞かせしていたレイモンドが、泣き出してしまった娘に優しく言い聞かせる。
「ねぇ、レイモンド。レスティーナだけではなく、レオルナードとクローヴィスも外で遊べないから退屈だって言っていたわ」
九歳のレオルナードと七歳のクローヴィスの勉強を見ていた紗雪が、ある提案をしてきた。
「今日の昼食はお弁当にしようと思うの」
「弁当って確か、弁当箱という箱にご飯かパン・・・主食とメインディッシュとサイドディッシュが入っている・・・?」
「ええ。ここ数日、雨が降っているから部屋に閉じ籠っているでしょ?外で遊べない三人の気分を明るくさせる為にね」
祖母の美奈子から話に聞いた事があるだけではなく、実際に紗雪が作った弁当を食べたレイモンドであればそれが何なのかが分かる。
「しかし、あれは子供向けではなかった・・・そうか!お子様ランチのように子供が喜びそうに盛り付ければいいんだ!」
「そういう事。今からお弁当を作るわね」
「俺も手伝おうか?」
「せっかくの定休日ですもの。レイモンドは休んでいて欲しいわ」
自分よりも朝早くに起きてカフェ・ユグドラシルで出す料理の下拵えに調理、盛り付け、新メニューの考案等──厨房を仕切っているだけではなく、日頃から家事と育児に積極的に協力しているレイモンドの方が疲れているはずだ。
休みの日くらいゆっくりとして欲しい紗雪は立ち上がろうとしたレイモンドを止める。
「だったら料理を作っているパパだけではなくカフェの仕事に異世界の調味料の再現、家事と僕達の面倒を見ているママも疲れているって事だよね?」
「ママの代わりに僕とクローヴィスがお弁当って奴を作るよ」
幼い頃から両親の働く姿を見ている長男と次男が声を上げた。
「えっ?」
「レオルナード?クローヴィス?」
二人はレイモンドが料理を作っている姿を見て来ただけではなく、基本的な部分は両親から教わっているので簡単な料理に火を扱った料理も作る事が出来る。
それに、父が作った料理を食べた客が『美味しい』と笑顔を浮かべているように、レオルナードとクローヴィスにも自分達が作った料理を食べた両親と妹が喜ぶ顔が見たいという思いがあった。
「じゃあ、二人に作って貰おうかしら?」
出来ないところは自分達がサポートするという形でレオルナードとクローヴィスが弁当を作る事になったのだが、レスティーナが自分も兄達と一緒に作りたいと口を挟んできた。
「お願いね、レスティーナ」
「はい!」
兄達と一緒に料理を作る事が嬉しいのか、レスティーナは元気よく返事をする。
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