カフェ・ユグドラシル

白雪の雫

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㊸甘くて冷たい豆乳粥-4-

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 数十分後

 イケメンがラフな格好をしていても様になるように、イケオジも様になるのはお約束だ。そして、その法則は美少女と美女にも適用される。

 ダークエルフとは異なる美しさを持つ三人は美形という事もあるが、異種族だからという意味で市場を行き交う買い物客や地元の住人達から好奇心に満ちた視線で見られていた。

 「これがサユキの言っていた、米で作ったという菓子だな」

 アルバートが屋台で買ったのは、煎餅のように丸くて平たい形をしたものに蜂蜜を塗した米の揚げ菓子だった。

 (食べてみるか)

 屋台の店主から揚げ菓子を受け取ったアルバートはそれを口に運ぶ。

 (!?)

 「あ、甘い・・・」

 蜂蜜を適量に塗していれば、この揚げ菓子はアルバートの口に合っていただろう。

 嚥下すれば、焼け付くような甘さにアルバートは思わず顔を顰めてしまった。

 「サユキ、気が付いたか?この市場の屋台には小麦粉を使った菓子、それと牛乳が売っていない」

 「い、言われてみれば・・・。確かにそうですわね」

 食堂と屋台で売っている料理からプルメリア島では米が主食である事は察していたのだが、キルシュブリューテ王国よりも食文化が発達しているはずなのに小麦粉で作ったパンやデザート、牛乳がない事に気付く。

 「プルメリア島のダークエルフは酪農をやっていないから牛乳が市場で売っていない。或いはバニラやショコラのように王族といった特別な立場にある者しか口に出来ないか・・・だな」

 アルバートの言葉を聞いたレイモンドが己の推測を述べた。

 確か、日本でも飛鳥時代に牛乳はあったらしい。だが、当時は天皇や貴族といった特別な立場にある者しか口に出来なかったと聞いた事がある。

 プルメリア島では、牛乳はそのように位置付けられているのかも知れない。

 「もし、そうだとすればバニラを使ったデザート作りが難しくなるわね・・・」

 「そうとは限らないんじゃないのか?まぁ、今日の晩飯を食べに行く食堂で牛乳を使ったデザートがあるかどうかを聞けばいいんじゃねぇの?」

 「そう、ですね・・・」

 (プルメリア島に牛乳がなかったらどうすればいいの!?)

 地球では簡単に手に入るバニラビーンズの入手難易度が一気に上がったという事実に紗雪は内心頭を抱える。

 「紗雪、なかったら代用品を使って工夫すればいいだけだ」

 牛の乳がなければ羊か山羊の乳を使うという風にな

 「そ、そうね」

 (山羊の乳はクセがあったような・・・)

 紗雪は羊乳を飲んだ事がないのでどのような風味なのか全く分からないが、一度だけ口にした山羊の乳は牛の乳にはない匂いがあったような気がする。

 (でも、山羊の乳で作ったチーズは元の世界でも流通していたからデザートを作る事も出来るのよね?)

 「羊乳も山羊乳もなければ、大豆のような穀物で乳を作ればいいんだ」

 大豆で豆乳が作れるように、米でも乳を作れるはず。

 レイモンドはそう言っているのだ。

 (米で乳を作る、か・・・)

 ライスミルクの存在だけは知っているが、紗雪はそれを使ったデザートを作った事もなければ味も知らない。

 作り方は本を見ればいいとして、後は試作あるのみ。

 それに・・・レイモンドと一緒であればダークエルフの長を満足させるデザートが出来そうな気がする。






 (この燭台、ロスワイゼが喜びそうだな・・・)

 夕食の時間になるまで、三人は観光と視察を兼ねて市場を歩き回った。










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