カフェ・ユグドラシル

㊸甘くて冷たい豆乳粥-1-

　クッキー、ショートケーキ、タルト、アイスクリーム、シュークリーム、クレープ、プリン、マフィン、スコーン、ドーナツ、シフォンケーキ、チーズケーキ、マドレーヌ、フィナンシェ──･･･。

 （マフィンとスコーン、それからドーナツやシフォンケーキはベーキングパウダーを使うから無理ね）

　ベーキングパウダーがあれば菓子の幅が広がるし、ホットケーキミックスを作る事だって出来る。

　もしかしたら、新たな商売が出来るかも知れない。

　しかし、紗雪はベーキングパウダーの作り方を知らないので、マフィンやスコーン、ケーキの類を作るのを却下する。

　 （バニラを使ったスイーツ･･･あり過ぎるから却って悩むわね）

　思い浮かばない紗雪は溜め息を漏らす。

　 「紗雪、今はバニラを使ったデザートの事を忘れて市場に行かないか？」

　紗雪が考えている事を何となく察したレイモンドが話しかけてきた。

　 「市場を歩くだけでも気分転換になる」

　 「レイモンド･･･」

　婚約者の提案と気遣いを嬉しく思った紗雪は笑みを浮かべて、レイモンドと共に市場に出掛ける事にした。