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㊶プルメリア島の料理はエスニック-1-
しおりを挟むバナナ、マンゴー、パパイヤ、パイナップル、アボカド等──・・・
「正に南国の果物!」
宿屋に向かう途中で立ち寄った市場で売っている果物が目に入った紗雪は、これ等が輸入出来れば料理の幅がもっと広がると興奮していた。
「どんな料理が出来るんだ?」
「そうですね・・・」
アボカドはオムレツの具材にパスタのソース、バナナやマンゴーはケーキだけではなく先日、陛下にお出ししたシメパフェのトッピングとして、また、ジャムにする事も出来るので、それ等の果物が輸入出来ればキルシュブリューテ王国の食文化が今より豊かになるとアルバートに話す。
「・・・・・・食ってみたいな」
「シュルツベルクに戻ったら作りますわ」
「それは楽しみだ」
ロードクロイツやシュルツベルクとは異なる雰囲気の市場を楽しんだ後、一行は宿屋へと向かった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
(南国のリゾート地のコテージに泊まっているみたい)
ベッドに腰を下ろした紗雪が最初に思った事はそれだった。
部屋からは海が見渡せるし、家具や雑貨はラタンや麻といった素材で作ったものだ。
何よりハンドメイドの温もりを感じさせるインテリアが紗雪の心をリラックスさせる。
(晩ご飯まで、時間があるから・・・少しくらい、寝てもいい、よね?)
自分でも気付かないうちに緊張していたのかも知れない。
ベッドに身体を横たえた事で緊張の糸が切れた紗雪は静かに瞳を閉じる。
・・・ゆ、き
紗雪!
(!?)
「レ、レイモンド!?」
ゆっくりと開いた紗雪の瞳に飛び込んで来たのは、レイモンドの顔だった。
自分の名前を呼ぶレイモンドの声で目を覚ました紗雪が慌てて起き上がる。
「も、もしかして、私・・・寝ていたの!?」
「ああ」
(は、恥ずかしい・・・)
「!#%&@♫☆♪♭♣」
目を覚ませば自分の部屋にレイモンドが居たという事実に驚いてしまった紗雪は思わず言葉にならない声を上げてしまう。
「私の寝顔・・・見た、の?」
「ああ。気持ちよさそうに眠っていた紗雪の顔、可愛かった」
(は、恥ずかしい・・・)
ニコニコと笑みを浮かべながら可愛いと言い切ったレイモンドの台詞に紗雪の顔が赤く染まる。
「ひ、一つ聞いてもいいかしら?どうやって部屋に入ったの?」
鍵はちゃんとかけていたはずなのに──・・・。
「それはこれだ」
そう言ったレイモンドが紗雪に見せたのは一本の針金。
「針金とピッキングは冒険者に欠かせない道具と技能の一つだ!」
「それ犯罪だから!」
でも、何かの役に立ちそうだからやり方を教えて欲しいわ!
「・・・・・・二人共、何をやってんだ?」
紗雪とレイモンドが居る部屋にやって来たアルバートが呆れ果てた視線を二人に向ける。
え~っと・・・
「「痴話喧嘩?」」
「・・・・・・婚約者同士の仲が良い事は親として喜ぶべきなんだろうな」
首を傾げながら声を揃えて答えた紗雪とレイモンドに、アルバートは大きな溜め息を漏らす。
「それよりも飯を食いに行くぞ」
アルバートの言葉で窓に目を向けると、夕焼けが海を、空を茜色に染めていた。
宿屋を出た三人は近くの食堂へと向かう。
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