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㊳聖女の酵母作り-3-
しおりを挟む「瓶に水と葡萄を入れて、そのまま放置しただけで柔らかいパンが作れる液体が出来る?」
「そう!さっきも言ったように、水と葡萄があれば酵母が出来るんだから!知能が猿人レベルのあんた達にマヨネーズなんて高度なテクを要する調味料を作るなんて不可能だってあたしは悟ったの」
そんなあんた達でも酵母だったら作れるわ
だって、放置しておけばいいだけだもの
という訳で、今から酵母を作りなさい!
(猿人?)
自分達が猿人だとすれば、王太子のエドワードと騎士のギルバードを侍らせているあんたは猿だよ!!
(この女女、今すぐ殺してやりてぇ~)
心を一つにした料理人達は茉莉花に対して殺意を抱くのだが、悲しいかな。
性格は市井の娘が夢中になって読んでいる物語に出てくる悪役令嬢そのものだが、本性はどうであれ救国の英雄にして聖女。何より、エドワードが王太子妃に迎えたいと願っている少女なのだ。
そんな彼女を本当に殺してしまったら、エドワードによってどんな目に遭わされるか──・・・。
茉莉花は聖女であるが、どこかの貴族の養女として迎えられた訳ではない。言うなれば平民である。
しかし、茉莉花の背後には王太子という国王と王妃に次ぐ権力者が居るので、ここは逆らわない方が身の為だし、失敗すれば『自分達は聖女様の言う通りに作っただけだ』『猿人である自分達には、聖女様が住んでいた世界の料理を作る事は不可能です。ならば、聖女様が作るべきです!』と言えばいいだけだ。
そう判断した料理人達は酵母作りに取り掛かった。
といっても、瓶に水と葡萄を入れたらそのまま放置すればいいだけらしい。
料理人の一人が食器棚から出した瓶に葡萄と水を入れると、そのままテーブルの上に置いた。
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