カフェ・ユグドラシル

白雪の雫

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㊳聖女の酵母作り-1-

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 「流石、陛下・・・」

 「バニラビーンズの為だけに、あのような大型船を用意するなんて・・・」

 プルメリア島に向かう為、王都にあるカメリアという港町に来ていた紗雪とレイモンドは間の抜けた声を上げて驚く。

 「それだけ陛下はバニラビーンズというスパイスに期待しているという事だ」

 ((!?))

 「お養父様!?」

 「シュルツベルク伯!何故、ここに・・・?」

 「勿論、お前さん達の代わりにプルメリア島を治めるダークエルフの長と交渉する為だ」

 レイモンドは侯爵令息、紗雪は伯爵令嬢であるが、あくまでも二人は貴族の子供であって当主でもなければ奥方でもない。

 何の権限もない二人を交渉役にするのはダークエルフの長に対して礼を失すると思ったディートヘルムが、アルバートに今回の旅に同行するように命じたのだ。

 「シュルツベルク伯、陛下は父上に旅の同行を命じなかったのですか?」

 「バニラビーンズの事を言い出したのはサユキだからな」

 実はランスロットも今回の旅に同行したくて立候補したのだが、言い出した人間の父親が一緒に行くべきだろうというディートヘルムの一言でアルバートに決まったのだと二人に教える。

 「お養母様はお養父様が屋敷を留守にする事に対して反対しなかったのですか?」

 「バニラビーンズは王命だし、何よりシュルツベルク家の食事が豊かになるという理由で、ロスワイゼからの反対はなかったな」

 では、プルメリア島に行くとしようか





 三人はディートヘルムが用意した船に乗る。





 「す、凄い・・・」

 客室にあるのは寝心地が良さそうなベッド

 座り心地の良さそうな椅子と木の温もりを感じる小さなテーブル

 広めのバスルームとパウダールーム





 王族が使用する船なのか

 過去の迷い人の話を参考にして造ったからなのか

 船内の全部を見て回った訳ではないので断言出来ないが、木造である事を除けば個室は現代日本の豪華客船クラスの設備だった。

 (バニラビーンズが手に入ったら、バニラエッセンスを作って・・・。それをシュルツベルクの名物としてお養母様に売り出して貰おうかしら?)

 考え事をしている紗雪の耳に扉をノックする音が入って来た。

 「紗雪、入ってもいいか?」

 「どうぞ」

 扉をノックした後、部屋に入って来たのはレイモンドだった。

 「シュルツベルク伯が紗雪の勉強を見るのだそうだ」

 「勉強?」

 「紗雪はプラチナという通貨の単位を知らなかったから、その事に不安を覚えたシュルツベルク伯が改めて常識を教えるらしい」

 平民には縁のないプラチナ硬貨。
 貴族令嬢となった紗雪であれば、何らかの形でプラチナ硬貨を使う機会があるのかも知れない。

 ゴルドまでしか貨幣を知らなかった紗雪に不安を覚えたアルバートが自ら娘の教鞭を執るとの事だ。

 「分からないところがあれば俺も教える」

 「よろしくお願いします」





 紗雪がキルシュブリューテ王国について勉強をしている頃








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