カフェ・ユグドラシル

白雪の雫

文字の大きさ
上 下
150 / 454

㊲バニラビーンズ-2-

しおりを挟む










 「ダークエルフ?」

 「褐色の肌をしているエルフの事だ」

 レイモンドが紗雪に耳打ちをして教える。

 ダークエルフはエルフと同様に魔法に長けているが、一つだけ違いがある。

 それは、肉・魚・卵・牛乳といった動物性の食品に忌避感を抱いておらず口に出来るという事だ。

 「陛下、ダークエルフとエルフって肌の色が違うだけで同じ種族なのですよね?」

 それなのに、ダークエルフが乳製品や動物性の食品を食べたり飲んだりする事に紗雪は驚きを隠せないでいる。

 「エルフが口にせぬ卵や乳製品をダークエルフであれば口に出来る理由は余も分からぬが・・・サユキ嬢よ、そもそも
 ショコラはダークエルフが住むプルメリア島とインペラトーレ帝国でしか口に出来ぬ代物なのだ」

 「何故、ショコラが限られた地域でしか口に出来ないのですか?」

 「それはだな・・・地図を見て貰った方が早いな。デイビッド」

 地図を見なければ分からないと思ったディートヘルムがデイビッドに地図を持ってくるように命じる。

 「これが、フリューリングの地図・・・」

 デイビッドが数分も経たないうちに持ってきた地図には四つの大陸と幾つもの小さな島が描かれていた。

 「地図の左上辺りにあるのがクレール大陸。大陸の東南にあるのがキルシュブリューテ王国だ」

 クレール大陸の右下──中央に位置している巨大な大陸をソラール大陸という。そんな大陸の五分の四以上とソラール大陸から見て東にあるステルラ大陸の一部を軍事力で支配しているのがインペラトーレ帝国だ。

 周辺国はインペラトーレ帝国に朝貢し臣従する事で自国の平穏を保っている事を紗雪に教える。

 「もしかして・・・陛下もインペラトーレ帝国に従っているのでしょうか?」

 インペラトーレ帝国の皇帝がどのような人物なのか分からないが、魔王様なディートヘルムが他人に頭を下げる姿が想像できない紗雪は我知らずそんな言葉を口に出していた。

 「帝国側から見て、辺境の大陸に住む我等は野蛮人で征服する価値もないのだそうだ」

 (そのような思想って異世界にもあるのね。というより、どう考えても・・・)

 迷い人や召喚された異世界人、召喚に巻き込まれた異世界人が市民権を得ているキルシュブリューテ王国は辺境というより魔境という言葉が相応しいような気がするとツッコミを入れたかったのだが、バニラビーンズの情報を手に入れる事が先なので紗雪はディートヘルムの話を聞く事にした。









しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

聖女の、その後

六つ花えいこ
ファンタジー
私は五年前、この世界に“召喚”された。

妹と寝たんですか?エセ聖女ですよ?~妃の座を奪われかけた令嬢の反撃~

岡暁舟
恋愛
100年に一度の確率で、令嬢に宿るとされる、聖なる魂。これを授かった令嬢は聖女と認定され、無条件で時の皇帝と婚約することになる。そして、その魂を引き当てたのが、この私、エミリー・バレットである。 本来ならば、私が皇帝と婚約することになるのだが、どういうわけだか、偽物の聖女を名乗る不届き者がいるようだ。その名はジューン・バレット。私の妹である。 別にどうしても皇帝と婚約したかったわけではない。でも、妹に裏切られたと思うと、少し癪だった。そして、既に二人は一夜を過ごしてしまったそう!ジューンの笑顔と言ったら……ああ、憎たらしい! そんなこんなで、いよいよ私に名誉挽回のチャンスが回ってきた。ここで私が聖女であることを証明すれば……。

お飾りの聖女は王太子に婚約破棄されて都を出ることにしました。

高山奥地
ファンタジー
大聖女の子孫、カミリヤは神聖力のないお飾りの聖女と呼ばれていた。ある日婚約者の王太子に婚約破棄を告げられて……。

辺境地で冷笑され蔑まれ続けた少女は、実は土地の守護者たる聖女でした。~彼女に冷遇を向けた街人たちは、彼女が追放された後破滅を辿る~

銀灰
ファンタジー
陸の孤島、辺境の地にて、人々から魔女と噂される、薄汚れた少女があった。 少女レイラに対する冷遇の様は酷く、街中などを歩けば陰口ばかりではなく、石を投げられることさえあった。理由無き冷遇である。 ボロ小屋に住み、いつも変らぬ質素な生活を営み続けるレイラだったが、ある日彼女は、住処であるそのボロ小屋までも、開発という名目の理不尽で奪われることになる。 陸の孤島――レイラがどこにも行けぬことを知っていた街人たちは彼女にただ冷笑を向けたが、レイラはその後、誰にも知られずその地を去ることになる。 その結果――?

三回も婚約破棄された小リス令嬢は黒豹騎士に睨まれる~実は溺愛されてるようですが怖すぎて気づきません~

鳥花風星
恋愛
常に何かを食べていなければ魔力が枯渇してしまい命も危うい令嬢ヴィオラ。小柄でいつも両頬に食べ物を詰めこみモグモグと食べてばかりいるのでついたあだ名が「小リス令嬢」だった。 大食いのせいで三度も婚約破棄されてしまい家族にも疎まれるヴィオラは、ひょんなことからとある騎士に縁談を申し込まれる。 見た目は申し分ないのに全身黒づくめの服装でいつも無表情。手足が長く戦いの際にとても俊敏なことからついたあだ名が「黒豹騎士」だ。 黒豹に睨まれ怯える小リスだったが、どうやら睨まれているわけではないようで…? 対照的な二人が距離を縮めていくハッピーエンドストーリー。

聖女業に飽きて喫茶店開いたんだけど、追放を言い渡されたので辺境に移り住みます!【完結】

青緑
ファンタジー
 聖女が喫茶店を開くけど、追放されて辺境に移り住んだ物語と、聖女のいない王都。 ——————————————— 物語内のノーラとデイジーは同一人物です。 王都の小話は追記予定。 修正を入れることがあるかもしれませんが、作品・物語自体は完結です。

(完)聖女様は頑張らない

青空一夏
ファンタジー
私は大聖女様だった。歴史上最強の聖女だった私はそのあまりに強すぎる力から、悪魔? 魔女?と疑われ追放された。 それも命を救ってやったカール王太子の命令により追放されたのだ。あの恩知らずめ! 侯爵令嬢の色香に負けやがって。本物の聖女より偽物美女の侯爵令嬢を選びやがった。 私は逃亡中に足をすべらせ死んだ? と思ったら聖女認定の最初の日に巻き戻っていた!! もう全力でこの国の為になんか働くもんか! 異世界ゆるふわ設定ご都合主義ファンタジー。よくあるパターンの聖女もの。ラブコメ要素ありです。楽しく笑えるお話です。(多分😅)

逆行令嬢は聖女を辞退します

仲室日月奈
恋愛
――ああ、神様。もしも生まれ変わるなら、人並みの幸せを。 死ぬ間際に転生後の望みを心の中でつぶやき、倒れた後。目を開けると、三年前の自室にいました。しかも、今日は神殿から一行がやってきて「聖女としてお出迎え」する日ですって? 聖女なんてお断りです!

処理中です...