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㊲バニラビーンズ-1-
しおりを挟む「実はバニラビーンズという甘い香りがする黒い種子が欲しいのですが、陛下はどこの国で栽培しているか・・・。或いは、どこの商会で販売しているのかをご存じでしょうか?」
紗雪の望みは、バニラビーンズを手に入れる事だった。
元の世界に帰る方法を尋ねるのではないかと思い、緊張していたレイモンドは気付かれないように安堵の息を漏らす。
「バニラビーンズ?」
「はい」
黒い莢にある種──バニラビーンズを使った焼き菓子や生菓子、氷菓は甘い香りがするだけではなく風味が豊かになる事をディートヘルムに話す。
「サユキ嬢。そなたが所望しているバニラビーンズとやらだが、ダークエルフの王族とインペラトーレ帝国の皇族と貴族が特別な日にしか口に出来ない贅沢な嗜好品の一つとなっているショコラという飲み物に入っている甘い香りがするスパイスで合っているな?」
「フリューリングで実物を見た事がないので是と答える事は出来ませんが、おそらく・・・」
オークやコカトリスといった魔物を食べられる事を除けば、フリューリングにある食材は見た目だけではなく呼び方も地球のものと同じなので、紗雪が言っているバニラビーンズとディートヘルムが言っているバニラビーンズは同じだと思う。
(人参やジャガイモといった野菜に葡萄や苺といった果物、そして豚肉や牛肉がどうして呼び方が地球と同じなのかしら?過去の迷い人がそう呼んでいたから、それが広まったの?それとも・・・私は日本語で、レイモンド達はキルシュブリューテ語で会話をしているけど、この世界そのものに自動翻訳機能があるから言葉が通じているとか?)
今はフリューリングという世界についてではなくバニラビーンズだ。
いや、それよりも──・・・。
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