カフェ・ユグドラシル

白雪の雫

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㉟フレンチトーストのシャーベット添え-4-

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 「異世界では、パンプディングの事をフレンチトーストと呼んでいるのかしら?」

 「母上からそのような話を聞いた事がないのだが、おそらくそうであろうな。確かに、このフレンチトーストというデザート・・・パンプディングに似ている」

 「俺達が知っているパンプディングは食事や保存食だが、フレンチトーストはデザートそのものだな」

 ランスロット達の言うように、卵液に浸して柔らかくしたパンが入っている器に野菜や肉を入れる、或いは果物と一緒に蒸し焼きにするパンプディングという料理とフレンチトーストは確かに似ていた。

 しかも、保存食としての一面もあるからなのか、果物が入っているパンプディングには大量に砂糖が入っているので喉が焼け付くように甘過ぎるのだ。

 「パンプディングに似ているフレンチトーストとシャーベット・・・この二つを一緒に食べるとどんな食感になるのか楽しみだわ」

 四人がフレンチトーストに口を付けていく様を、紗雪とレイモンドは固唾を呑んで見守る。

 「カスタードソースに浸けたパンが甘くてふわふわしているわ」

 「甘味も感じるけど、俺達が知っている甘さとは違って上品で円やかな甘さだな」

 「フレンチトーストの柔らかさと温かさ、杏のジャムの甘酸っぱさ、溶けかけているシャーベットの冷たさと濃厚な牛乳のコクと甘さが一つになって舌の上で溶けていく・・・」

 「良かった・・・」
不味いだの、甘過ぎるだのと言われるのではないかと思っていた紗雪は安堵の息を漏らす。

 「これ、陛下にお出ししても大丈夫かな?」

 冷たいものばかり食べていたら舌が冷たく感じてくるし、身体も冷えてくるから口直しの意味でフレンチトーストを用意したと言った紗雪にレイモンドが微妙と言わんばかりの表情を浮かべる。

 (・・・・・・・・・・・・)

 「・・・サユキ、陛下が求めているのはタルトのように華やかな氷菓であって、フレンチトーストではない」

 「そうね。サユキが作ったフレンチトーストが美味しいのは確かだし、盛り付けも綺麗よ。口直しというのも分かるわ」

 「夏だからと言って冷たいものばかり食べていたら身体に良くないもの」

 「しかし、このデザートはどう考えてもシャーベットではなくパンプディング・・・フレンチトーストがメインとしか思えない。きっと、氷菓を望んでいる今の陛下にはお気に召されない料理だろう」

 「難しいわね」

 紗雪自身、フレンチトーストのシャーベット添えがディートヘルムの希望に沿ったデザートであったとは思っていないし、四人の意見を当然だと受け止めているが、心理的なダメージがあった事は否定出来ない。

 (まぁ、不味いと言われなかっただけ良かったと思うしかないわね)

 彼等からダメ出しを食らった紗雪は、改めてどのような氷菓を作ろうかと考えていたその時、レイモンドが声を上げた。





 焼き菓子と氷菓を一つのカップに入れればいいのだと───・・・。









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