カフェ・ユグドラシル

白雪の雫

文字の大きさ
上 下
143 / 465

㉟フレンチトーストのシャーベット添え-3-

しおりを挟む










 次の日の朝

 朝食前に厨房に来た紗雪は冷蔵ボックスから昨日のうちに低温殺菌しておいた牛乳、調味料が入っている棚から砂糖、調理器具が入っている棚から鍋を取り出す。

 紗雪が今から作ろうとしているのはシャーベットだ。

 牛乳と砂糖を入れた鍋をコンロの上に置くと、煮立たせないように温めながら木べらで混ぜ合わせる。

 鍋に入っていた牛乳にとろみがついてきたので火を止めた紗雪は、それをザルで濾しながらバットへと入れると粗熱を取る為に冷ます。

 粗熱が取れたので牛乳が入っているバットを冷凍ボックスに入れると、自分に宛がわれている部屋へと戻る。





◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆





 昼食を終えた後、今度はレイモンドと共に厨房に来た紗雪が作ろうとしているのはフレンチトーストだ。

 「レイモンド様、サユキ様。我等も手伝います」

 「よろしくお願いします」

 と言っても、昨日のうちにカットして卵液に浸しておいたパンを焼くだけある。

 まずは、弱火で温めたフライパンにバターを入れる。

 「いい匂い・・・」

 溶けたバターの香りが紗雪だけではなく、フライパンの前に立っているレイモンドの鼻腔を擽る。

 バターが溶けているフライパンにパンを入れると、弱火でじっくりと焼いていく。片面が焼けてきたのでひっくり返して焼けてない片面に火を通す。

 「後は焼けたフレンチトーストにシャーベットを添えて杏のジャムをかけたら完成です。給仕さん達はロードクロイツ侯爵達がいる食堂に運んで下さい」

 「かしこまりました」

 冷凍ボックスからシャーベット、冷蔵ボックスから杏のジャムを取り出した紗雪は、焼けたフレンチトーストにそれ等を盛り付けていく。

 給仕達は出来上がったフレンチトーストをキッチンワゴンに載せると、ランスロット達が待つ食堂へと運ぶ。

 「な、何て言えばいいのでしょうか・・・?」

 杏の鮮やかなオレンジ色、黄色いフレンチトーストにきちんと火が通っている事を示す焼き色、シャーベットの白色が一つになったデザートは自分達が知っている菓子とは別の美しさがあった。

 「私達はお養父様達の意見を聞きたいから食堂に行くけど、皆の分も作っているから食べてね」

 時間が経つとシャーベットが溶けてしまうから出来るだけ早めに食べて欲しい事だけを告げた紗雪はレイモンドと共に食堂へと向かう。








しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

強制力がなくなった世界に残されたものは

りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った 令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達 世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか その世界を狂わせたものは

【完結】『飯炊き女』と呼ばれている騎士団の寮母ですが、実は最高位の聖女です

葉桜鹿乃
恋愛
ルーシーが『飯炊き女』と、呼ばれてそろそろ3年が経とうとしている。 王宮内に兵舎がある王立騎士団【鷹の爪】の寮母を担っているルーシー。 孤児院の出で、働き口を探してここに配置された事になっているが、実はこの国の最も高貴な存在とされる『金剛の聖女』である。 王宮という国で一番安全な場所で、更には周囲に常に複数人の騎士が控えている場所に、本人と王族、宰相が話し合って所属することになったものの、存在を秘する為に扱いは『飯炊き女』である。 働くのは苦では無いし、顔を隠すための不細工な丸眼鏡にソバカスと眉を太くする化粧、粗末な服。これを襲いに来るような輩は男所帯の騎士団にも居ないし、聖女の力で存在感を常に薄めるようにしている。 何故このような擬態をしているかというと、隣国から聖女を狙って何者かが間者として侵入していると言われているためだ。 隣国は既に瘴気で汚れた土地が多くなり、作物もまともに育たないと聞いて、ルーシーはしばらく隣国に行ってもいいと思っているのだが、長く冷戦状態にある隣国に行かせるのは命が危ないのでは、と躊躇いを見せる国王たちをルーシーは説得する教養もなく……。 そんな折、ある日の月夜に、明日の雨を予見して変装をせずに水汲みをしている時に「見つけた」と言われて振り向いたそこにいたのは、騎士団の中でもルーシーに優しい一人の騎士だった。 ※感想の取り扱いは近況ボードを参照してください。 ※小説家になろう様でも掲載予定です。

【完結】聖女召喚に巻き込まれたバリキャリですが、追い出されそうになったのでお金と魔獣をもらって出て行きます!

チャららA12・山もり
恋愛
二十七歳バリバリキャリアウーマンの鎌本博美(かまもとひろみ)が、交差点で後ろから背中を押された。死んだと思った博美だが、突如、異世界へ召喚される。召喚された博美が発した言葉を誤解したハロルド王子の前に、もうひとりの女性が現れた。博美の方が、聖女召喚に巻き込まれた一般人だと決めつけ、追い出されそうになる。しかし、バリキャリの博美は、そのまま追い出されることを拒否し、彼らに慰謝料を要求する。 お金を受け取るまで、博美は屋敷で暮らすことになり、数々の騒動に巻き込まれながら地下で暮らす魔獣と交流を深めていく。

神々に天界に召喚され下界に追放された戦場カメラマンは神々に戦いを挑む。

黒ハット
ファンタジー
戦場カメラマンの北村大和は,異世界の神々の戦の戦力として神々の召喚魔法で特殊部隊の召喚に巻き込まれてしまい、天界に召喚されるが神力が弱い無能者の烙印を押され、役に立たないという理由で異世界の人間界に追放されて冒険者になる。剣と魔法の力をつけて人間を玩具のように扱う神々に戦いを挑むが果たして彼は神々に勝てるのだろうか

魅了が解けた貴男から私へ

砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。 彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。 そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。 しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。 男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。 元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。 しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。 三話完結です。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

召喚聖女に嫌われた召喚娘

ざっく
恋愛
闇に引きずり込まれてやってきた異世界。しかし、一緒に来た見覚えのない女の子が聖女だと言われ、亜優は放置される。それに文句を言えば、聖女に悲しげにされて、その場の全員に嫌われてしまう。 どうにか、仕事を探し出したものの、聖女に嫌われた娘として、亜優は魔物が闊歩するという森に捨てられてしまった。そこで出会った人に助けられて、亜優は安全な場所に帰る。

学年揃って異世界召喚?執行猶予30年貰っても良いですか?

ばふぉりん
ファンタジー
とある卒業式当日の中学生達。それぞれの教室でワイワイ騒いでると突然床が光だし・・・これはまさか!? そして壇上に綺麗な女性が現れて「これからみなさんには同じスキルをひとつだけ持って、異世界に行ってもらいます。拒否はできません。ただし、一つだけ願いを叶えましょう」と、若干頓珍漢な事を言い、前から順番にクラスメイトの願いを叶えたり却下したりと、ドンドン光に変えていき、遂に僕の番になったので、こう言ってみた。 「30年待ってもらえませんか?」と・・・ →→→→→→→→→→→→→→→→→→→→  初めて文章を書くので、色々教えていただければ幸いです!  また、メンタルは絹豆腐並みに柔らかいので、やさしくしてください。  更新はランダムで、別にプロットとかも無いので、その日その場で書いて更新するとおもうのであ、生暖かく見守ってください。

処理中です...