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㉞ローゼンタール公爵夫人-4-
しおりを挟む「ローゼンタール公爵夫人・・・」
(えっ?この少女がローゼンタール公爵夫人・・・?)
「紗雪殿、彼女はローゼンタール公爵夫人であるマスミ殿。つまり・・・紗雪殿と同郷の人間という事になる」
アルバートとランスロットの言葉で彼女が何者なのか分かった紗雪であったが、そんな彼女にある疑問が芽生える。
「お、お養父様?ロードクロイツ侯爵?一つお聞きしたいのですが・・・もしかして、ローゼンタール公爵はロリコンだったのですか!?」
「誰がロリコンよ!あたしは十七歳なんだから!断じてジェラルドはロリコンじゃないわ!!」
「十七歳!?嘘でしょ?どこからどう見ても貴女は大人っぽい小学生じゃない!」
ムキーッ
「モデル並みに背が高くて胸が大きいってだけで、某世紀末救世主が某世紀末覇者を倒した時に向けた憐みの目をあたしに向けて見下してんじゃないわよ!!」
あたしより美人な日本人なんか・・・消えちゃえ!!!
紗雪はマスミを見下しているつもりなどないのだが、彼女にしてみればそうでなかったらしい。
受付嬢をはじめとする商業ギルドの職員達が不安そうに見守る中、自分にはないものを持っている紗雪に対する嫉妬マスミが大声で叫びながら魔法で出した巨大な火の玉を目の前に立つ同郷の女性にぶつける。
「紗雪!」
「貴女ね・・・仮にも公爵夫人を名乗っているのなら、自分の取った行動が周囲にどのような影響を及ぼすのかを考えて行動しなさい!」
魔法が一切使えない紗雪にはマスミが出した巨大な火の玉を打ち消すなど不可能だ。
婚約者をマスミと火の玉から護る為、レイモンドが剣を構えて紗雪の前に立った。
「大丈夫よ、レイモンド。これくらいの火の玉なんて簡単に打ち消す事が出来るわ」
紗雪の言葉通り、巨大な火の玉は突然出現した水によって消えてしまった。
「さ、紗雪・・・?紗雪は魔法が使えない、はず・・・」
「ええ。だから、後鬼という水を操る能力を持つ式神を召喚して彼女が出した火の玉を消したの」
「ゴキ?」
「そう。平安時代・・・私が産まれる千年以上も前の話になるのだけど、夫の前鬼と共に都を荒らしていた鬼・・・フリューリング風に言えばオーガになるのかな?その二人をご先祖様が調伏して使役していたの。その式神を私が調伏して使っているという訳」
(な、何て強大で禍々しいエネルギーなんだ!)
今のレイモンドは、紗雪から霊力を注がれていないので式神が見えない。
だが、ゴブリンにオーク、ミノタウロスにオーガ、ケルベロスといった魔物や魔獣、ゴーストやレイスというアンデッド系のモンスターを倒してきたからなのか、戦いの世界に身を置いてきた人間として後鬼から発せられるエネルギーがどのようなものなのかを肌で感じ取る事くらいは出来る。
「レイモンド・・・」
「ち、父上、シュルツベルク伯も・・・感じますか?」
「ああ・・・こうして立っているだけでも、息苦しさを感じる・・・」
術者の力が弱かったら精神に異常をきたすか、最悪の場合は死に至ると言っていたが、どうやらそれは本当であるらしい。
そのような化け物を使役出来るだけではなく平然としている紗雪に、レイモンド達は恐ろしさを感じると同時に修行を積めば強力な精霊使いになっていたのではないか?と思っていた。
「ローゼンタール公爵夫人。一歩間違えれば貴女は大量殺人鬼になって・・・ってローゼンタール公爵夫人?」
「サユキ?ローゼンタール公爵夫人ことマスミちゃんなんだけどな・・・」
「ゴキとやらから発せられたエネルギーに触れたせいで気を失ってしまったみたいだ」
ランスロットが指した先にあったのは、口から泡を吹いて気絶してしまったマスミの姿だった。
ちなみに、基礎的な魔法は使えるがまともに戦闘訓練を積んでいないマスミが後鬼から発せられるエネルギーと凶悪な威圧感に負けてしまい粗相をしてしまった事は言うまでもない。
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