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㉞ローゼンタール公爵夫人-3-
しおりを挟む「サユキ様、酵母の登録が完了しました」
紗雪の説明書通りに作ったパンは柔らかかったので、商業ギルドは彼女が考案した商品として登録する事になった。
これからは酵母の使用料が彼女の懐に入って来る事実を受付の一人が告げる。
「あ、ありがとうございます・・・」
普通、自分が考案・発明した商品が登録されたら嬉しそうな反応をするのが当然なのに、紗雪はどこか浮かない表情だ。
「紗雪?」
(ああ・・・酵母が自分の発明したものとして登録されたという事実に罪悪感を抱いているのか)
美奈子とマスミのように神経が図太ければいいのにとレイモンドは思うのだが、紗雪の性格と心の中では割り切れないものがあるのだろう。だが、こればかりはどうしようもない。
「紗雪、酵母の使用料で得る報酬は紗雪が持っている知識の対価だ。その対価は自分の為に使えばいい」
「レイモンド・・・?」
「自分の為に使う事を厭うのであれば、異世界の料理を再現する為に使えばいいのではないのか?それはやがて、キルシュブリューテ王国・・・ひいてはフリューリングの食文化の発展に繋がる」
「・・・・・・そうね。キルシュブリューテ王国の物価はウィスティリア王国と比べたら安いけど、日本と比べたら高いもの。それに、日本で食べる事が出来る料理を作る為にはまず先立つものがないとね」
トマトケチャップにウスターソース、これはアルバートの力を借りる形になるが桜花という国から輸入して欲しい大豆をはじめとする穀物を使った料理とスイーツ、塩だれに粉末の鶏がらスープといった調味料、かき氷機にソフトクリームメーカー等
日本にある調味料に調理器具をキルシュブリューテ王国で再現するには、お金は多くあった方がいいのだ。
「ありがとう、レイモンド」
日本で食べられる料理を再現し、それ等を広める為に使う金は本当の意味で有意義な、そして活きた金の使い方なのではないだろうか。
「二人共、馬鹿じゃないの?金っていうのは、自分の為に使うのがジョーシキよ!」
それを日本の料理や調味料を再現する為に使うって有り得ないっつーの!
そういう事は税金でやりゃあいいのよ!
紗雪とレイモンドの会話が聞こえたのか、十歳から十二歳くらいの黒髪黒目の少女が二人の間に割り込んで来た。
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