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㉜エビマヨのホットサンド-3-
しおりを挟む『ウィスティリア王国のエドワード王太子、サユキ嬢が魔法を使えないと分かっていながら邪神・サマエルの討伐に同行させただけではなく、フリューリングの常識を教えずに追放したとは・・・』
自分達だったら、今までの常識が一切通じない異世界で生きて行く事など不可能だ。
話を聞いたディートヘルムとデイビッドは思わず涙ぐむ。
『今後はロードクロイツ家とシュルツベルク家だけではなく、王家もそなたがこの世界で生きて行けるように助力するとしよう』
『陛下のお心遣い、痛み入ります』
国の発展の為に異世界人を利用するとはいえ、王家が見ず知らずの人間である自分をこの世界で生きていけるようにしようとしてくれる事に紗雪は素直に礼を口にした。
『・・・・・・まぁ、堅苦しい話はそれくらいにして。サユキ嬢、余がそなたを呼び出した理由は知っておるな?』
『はい、存じております』
ディートヘルムの為にカステラとアフォガートを作りに来たと答える。
うむ・・・
『実はそなたに会ってみたかったというのもあるが、最大の理由は一部の夫人達が噂していたカステラとアフォガートを余が食したいのだ!!』
もちもちとしているのに、しっとりとした食感で程よい甘さのカステラというケーキのスポンジに似た菓子
牛乳の濃厚なコクと優しい甘さを感じるシャーベットという、単に牛乳を凍らせただけではない氷菓
煮出したコーヒーを注ぐ事でシャーベットの甘さを引き立てると言うではないか!
『異世界のデザートは、さぞかし美味なのであろうな・・・』
その言葉が自分を未知の甘味に対する好奇心と欲望を駆り立てたのだと、ディートヘルムがうっとりとした表情を浮かべながらカステラとアフォガートに対する期待を熱く語った。
だって、自分達が普段食べているデザートの類が余りにも甘過ぎるから。
『酒が嗜めぬ余にとって、菓子は楽しみであり慰めなのだ・・・』
我が国の菓子は甘過ぎるという欠点はあるからな
ゴブレットを片手にワインやブランデーを・・・いや、どちらかと言えば美女の生き血を煽る姿が非常に様になっているRPGのラスボスとして登場してもおかしくない魔王様なディートヘルムが、アルコール類を一切受け付けないという事実に紗雪はある意味衝撃を受けた。
『お口に合うかどうか分かり兼ねますが・・・カステラとアフォガートを陛下の為に作らせて頂きます』
キルシュブリューテ王国の菓子は、喉が焼け付くように甘過ぎて飲み込むのに苦労するレベルだとレイモンドが言っていた。
という事はランスロットにエレオノーラのみならず、アルバートにロスワイゼ、そしてディートヘルムも甘過ぎるクッキーやケーキ等に苦しめられていたのかも知れない。というより、苦しんでいたと言ってもいい。
(王侯貴族って大変なのね・・・)
心からそう思ってしまった紗雪はディートヘルムにそう言ってしまう。
『サユキ嬢・・・感謝する!!』
心を癒し満たすものであるはずのデザートに、彼等が苦しめられていたという事実に紗雪は心の中で涙を流す。
しかし、自分とレイモンドが作った適度な甘さのカステラとアフォガートを食べる事でディートヘルムの心が慰められるのであれば──・・・。
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