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㉚鰻の蒲焼き-3-
しおりを挟む「こ、これは・・・!」
「鰻の身は柔らかく、皮が香ばしく焼けていますわ!」
「鰻の皮はブヨブヨしているから何時も残していたけど、蒸してから炭火で焼けば身と一緒に食べる事が出来たという事か!」
「しかも生臭くも泥臭くもないし、骨がないからこのまま食べ進める事が出来る!」
「甘さの中に辛さも感じるソースがかかっている白米と鰻を一緒に食べると・・・」
う~ん♡
美味しい~♡
泥臭くて生臭くて不味い鰻。
だが、平民にとって安価で手に入る食材にして貴重な栄養源でもある。
その鰻が、ここまで美味しくなるなんて夢にも思っていなかったレイモンド達の顔には満面の笑みが浮かんでいた。
「ミソで作ったミソシルとやらはランスロットが言っていた通り、心が安らぐと言えばいいのか?何だかホッとする味だな」
味噌を使った調理法と料理を広めたいと思いながら、アルバートは豆腐とキャベツの味噌汁を食べ進めていく。
「サユキ。異世界というか日本では鰻を蒲焼きという形で食べるのが主流だと思うのだが、他の調理法はないのか?」
「そうですね・・・。和風であれば、ひつまぶし、寿司、白焼きにした鰻をわさび醤油で食べるか、塩を振りかけるか。洋風であれば白ワインで蒸し焼きにするか・・・」
後は・・・そうですね
古代ローマでは鰻に魚醤と蜂蜜を混ぜて作ったタレを塗って焼いていたと聞いた事がありますので、魚醤で蒲焼きをつくるのもありかも知れません
但し、魚醤を使った料理は作った事がないので、どのような味になるのか分かりませんけど・・・
養父の問いに紗雪は自分が知っている限りの食べ方を教える。
「紗雪、鰻を揚げ物・・・フライや天ぷら、後はチキンライスを卵で包んだ・・・オムライスだったか?それからオムレツ。それを応用した形で食べる事は出来ないのか?」
「えっ?蒲焼き、う巻、寿司が鰻の王道の食べ方よ。それを油で揚げるなんて・・・!」
鰻を油で揚げたり、オムライスという形で食べる発想がない美奈子が声を上げる。
「私も美奈子さんのように鰻をフライや天ぷらにするなんて思い浮かばなかったけど・・・でも、どんな風になるのか興味あるわね」
日本人である紗雪と美奈子には思いつかなかった鰻の食べ方。
侯爵家の三男として育ってきたレイモンドは、味はともかく平民と比べたら色々な調理法で作って来た料理とデザートを口にしている。
一方、紗雪と美奈子は鰻と言えば蒲焼き、寿司、う巻という一種の固定観念がある。
異世界人であり、冒険者として世界各地を巡りその地方の料理を口にしてきたレイモンドだからこそ考えに囚われず、天ぷらやフライだけではなくオムライスやオムレツという方法が浮かんだのかも知れない。
「ゼリー寄せでしか食べる方法がないと思っていた鰻に色々な食べ方があると分かっただけでも良しとするか!」
という訳で、サユキ。鰻のフライや天ぷら、それからオムレツとオムライスとやらを作ったら俺に試食させろ
「紗雪殿、レイモンド、意見は一人でも多い方がいい。私も試食したい!」
「レイモンド、こういう意見は男性だけではなく女性目線も大事よ!」
「「わ、分かりました・・・」」
鰻の旬は秋から冬ですので、その時でよろしければ・・・
七人の迫力に思わずレイモンドと紗雪は涙目になりながらも、フライに天ぷら、オムレツにチキンライスではなく鰻を混ぜたご飯を薄焼き卵で包んだオムライスを食べさせる事を約束するのだった。
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