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㉘酵母の登録-3-
しおりを挟む「同じ商業ギルドでもグラナードとシュルツベルクでは雰囲気が違うのね」
グラナードの商業ギルドのテーブルや椅子、インテリアはカントリー調で統一しているのに対し、シュルツベルク領にある町の一つであるラルゴの商業ギルドは南国リゾート風と言えばいいのか、海を感じさせるものだった。
酵母を登録して貰う為、一行は登録を受け付けている窓口へと向かう。
(この女、人間じゃない。海や川に棲む魔物か妖精の類・・・恐らく彼女は人魚)
姿形はどう見ても人間でしかないのだが、海を思わせる水色の髪と瞳を持つ彼女から感じる気配は人間のものではなかった。
(でも、彼女から悪意は感じないし、シュルツベルク・・・ひいてはキルシュブリューテ王国を混乱させようという気なんてないから放っておいても・・・)
「!!」
ここは日本じゃないのに、つい篁の人間としての考え方をしてしまった事に紗雪は心の中で苦笑を浮かべる。
「商業ギルドへようこそ。本日はどのような用件でお越しでしょうか?」
「実は「あなた、何者ですか!?貴女から感じる気配・・・どう考えても人間のものじゃない!ならば精霊?いや、エルフよりも上位の存在・・・?でも、どこからどう見ても人間だし・・・」
「貴女は何の理由があって紗雪を人間ではないと?」
酵母の登録に来ただけなのに、婚約者を人外扱いされて気分を悪くしたレイモンドが受付嬢を咎める。
「でも、本当にこの人からは「いいの、レイモンドさん。元の世界でも霊感が強いというだけで子供の頃は遠巻きにされていたから・・・」
幸いな事に先祖である篁 雅臣が漫画やゲームで有名だったし、メディアでも取り上げられてブームになっていたから虐められていなかったが、それでも自分達とは違う人間なのだという目で見られていたのは確かだ。
今回もそれと似たようなものだし、慣れているから気にしていないのだと、紗雪は自分が幼い頃の話を交えながらレイモンドを宥めていた。
「紗雪は強いのだな」
「強い女は嫌いかしら?」
「いや。強い弱いとか関係なく、俺は紗雪という女が好きで、誰よりも大切に思っているんだ」
「レイモンドさん。その、私の事を呼び捨て・・・」
(!!)
「・・・す、済まない」
婚約者からの指摘で、自分が紗雪を呼び捨てにしている事に気が付いたレイモンドが顔を赤くしながら謝罪の言葉を告げる。
「元の世界では父親、フリューリングではお養父様以外の男性から名前を呼び捨てにされた事がなかったから驚いたけど・・・」
でも、好きな人から呼び捨てにされるのは、その人の特別という感じがして嬉しい・・・
紗雪もまた顔を真っ赤にしながらレイモンドに自分の想いを口にした。
「これからは紗雪・・・殿の事を紗雪と呼んでも・・・?」
「ええ・・・」
レイモンドの申し出に紗雪が頷く。
あ~
あ~
「二人共?そういう事は人前ではなく二人きりの時にやってくれないかな~?」
「若いっていいわね~」
ランスロットとアルバートのワザとらしい咳払いで、ここがどこなのかを気が付いた紗雪とレイモンドの顔が先程とは別の意味で真っ赤に染まっていた──・・・。
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