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㉗ちくわパンとカルツォーネ-5-
しおりを挟む「昨日食べたピザと食感は同じなのに、包んでいるだけでも違う料理だと感じるわね」
「これは鶏肉?いや、マグロ・・・なのか?」
「このマグロは焼いた?いや、違うな。塩気を感じるからまずは塩を塗してから数時間干した。それを水に浸して戻してから塩とニンニクとハーブで味付けをした、のか?」
「マグロとチーズが合うのは盲点でした」
「これ、朝食として出すのもいいかも知れないわね」
これはマグロに限らず魚全般に言える事なのだが、魚は焼くか煮る、或いは干物や塩漬けにしたものを水に浸してから食べるのがシュルツベルク、ひいてはキルシュブリューテ王国を含む近隣諸国の常識だった。
鶏肉のような歯応えと食感がありながらもローリエとニンニクの風味、脂の甘味を感じさせるマグロ、火を通した事で伸びるコクのあるチーズ、クリーミーなホワイトソース、白くて柔らかい生地。
(中の具材をベーコンにすれば、我が家でも食べる事が出来るな・・・)
それ等が一つになった、包みピザことカルツォーネを四人は黙々と味わう。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「筋の多いマグロは火に通せば食べ易くなる事は知っていましたが、オイルに浸けるという食べ方もあったのですね」
カルツォーネを試食している料理人達は、マグロの新しい食べ方に感動の声を上げる。
「お嬢様。マグロですけど、パスタにマグロを浸けていたオイルと混ぜれば合いそうな気がします」
「異世界・・・日本ではそのようにして食べているし、マグロを浸けていたオイルは炒め物にも使えるわよ」
そう言った紗雪は冷蔵ボックスにある野菜と残ったオイルを使ってパスタを作った。
後にこのオイル漬けを使った炒め物やパスタは、シュルツベルク家の料理人達の賄いの一つとなる──・・・。
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