カフェ・ユグドラシル

白雪の雫

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㉔ミルク煮-3-

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 レイモンドがカスタードプリンを作っている頃





 紗雪は鱸のミルク煮と野菜スープを作っていた。

 (スープに使う具材は豚肉と人参とジャガイモと玉ねぎでいいよね?)

 豚肉は少し大きめに、玉ねぎは薄切りに、ジャガイモと人参を角切りに切った後、鍋にオリーブオイルを入れて中火で豚肉を炒める。

 油がにじみ出てきたら薄切りにした玉ねぎと角切りにしたジャガイモと人参を加え、油がなじんだら水を加えるとコンロの火を中火から強火にして煮込む。

 具材が入っている鍋が煮立ったら塩と胡椒をそれぞれ少々、そしてロードクロイツを発つ前に作った顆粒ブイヨンを加えたら、火を弱めてアクを取りながら二~三分煮込んでいく。これで野菜スープの完成だ。

 (次はメインである鱸のミルク煮を作らないと・・・)

 紗雪は冷蔵ボックスから取り出した真鱸を手にしている包丁の刃先で鱗を落としてから水で洗い流した後、頭と内臓を取り除いていく。

 (私がこうして料理を作れるのは、母さんと篁家の教育方針のおかげだわ)





 一に修行、二に修行、三四がなくて五に修行!

 一に妖怪退治、二に妖怪退治、三四がなくて五に妖怪退治!





 日本では巫女として篁の使命を果たしつつ、母親から女性に必要な一般教養と家事全般を仕込まれる日々を送っていた紗雪に遊ぶ時間などなかった。

 当時は自分の好きなように遊べる友人達が羨ましいと思ったが、性女・・・ではなく聖女召喚に巻き込まれて異世界で生きて行く羽目になってしまった今となっては感謝しかないと思いつつ、紗雪は頭部と内臓を取り除いて水で洗い流した真鱸を三枚に下ろしていく。

 三枚に下ろした後、小骨を取り除いて皮つきのまま適当な大きさに切った真鱸に塩と胡椒を振りかける。

 次に紗雪はキャベツをざく切り、玉ねぎを薄切りに、小房に分けたしめじを、オリーブオイルを入れて熱している鍋に投入して炒めていく。

 炒めている野菜がしんなりしてきたので、鍋に真鱸、そして収納ポーチに入れていたロードクロイツの市場で買ったバターと牛乳を加えた後、落し蓋をして煮込む。

 煮込んでいくうちに汁気が少なくなってきたので、更に牛乳とチーズ、味を調える為の塩と胡椒を加えて中火で煮込んでいく。

 (こんなものかな?)

 出来上がった料理を皿に盛り付けると、鱸のミルク煮の完成だ。

 「で、出来た・・・」

 「後はシュルツベルク伯に食べさせるだけだな」

 「気に入ってくれるかしら?」

 「俺だけではなく父上と母上、グスタフ兄上とアルベルディーナ義姉上を虜にした異世界の料理だ。シュルツベルク伯も気に入るさ」

 給仕達は完成した料理をキッチンワゴンに載せると、アルバート夫妻と伯爵家の跡取りであるアルベリッヒ、そしてランスロットが居る食堂へと運んでいく。








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