カフェ・ユグドラシル

白雪の雫

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⑳冷製パスタ-1-

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 「紗雪殿。貴女にこのような事を頼むのはおかしいと分かっているのだが・・・我が家の料理人達に異世界の料理を教えてくれないだろうか?」

 (キルシュブリューテ王国の料理は、何故こうも不味いのか!!)

 焼き菓子やケーキは砂糖を大量に使っているから甘過ぎて喉が焼けるようだし!

 肉と魚はスパイスを大量に使っているから、このままでは何れ家族全員の舌が麻痺して味覚が破壊されてしまうわ!!

 「ち、父上もああ言っている事だし・・・。紗雪殿、この話を引き受けような?」

 「え、ええ、そうね。わ、分かりました・・・」

 ランスロットの心からの叫びを聞いてしまった紗雪は、ロードクロイツ家の料理人達に自分が知っている範囲の料理を教える事になったのだった。










◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆










 今日のご飯は何にしようか?





 これは主婦だけではなく、お抱えコックも抱えている悩みである。

 「レイモンド坊ちゃん、サユキさん。旦那様が喜びそうな異世界の料理、ありますかね?」

 「そうだな・・・」

 総料理長に問われたレイモンドは腕を組みながら考え込む。

 【突撃!隣の〇ご飯】をしてくるランスロットに好き嫌いはなかった。・・・ような気がする。

 だって、自分達が作った異世界の料理は残さず食べてくれていたのだから。

 「レイモンドさん。ロードクロイツ侯爵家の夕食だけど、冷製パスタにしたらどうかしら?」

 げっ!

 「冷製パスタって、昨日の俺達の晩ご飯がそれだったよな!?」

 二日続けて同じメニューである事に、レイモンドが思わず声を上げる。

 「でも、ロードクロイツ侯爵にとっては初めて口にするものだわ」

 「確かにそうだけど!」

 (羨ましい~)

 (そんな愚痴、一度でいいから言ってみてぇ~・・・)

 冷製パスタが何なのか分からないが・・・いや、名前からして冷たいパスタ料理であるのだと何となく分かるのだが、ロードクロイツ家の料理人達にとってそれは未知の存在だ。

 異世界の美味な料理を毎日食す事が出来るレイモンドに対して、料理人達が心の中で愚痴を零す。

 「昨日は豚しゃぶだったから、今日は生ハムという事で。後、スープは温かいもので副菜は野菜を中心にした方がいいわ」

 食後のデザートはタルトやケーキがいいかしら?

 夏という事でアイスクリーム?ジェラート?それとも、ゼリーがいいかしら?

 でも、ゼラチンってどうやって作るのかしら?

 ど、どうしよう・・・

 デザートが思い浮かばないわ

 (紗雪殿のそういうところを俺は気に入ってしまったんだよな~)

 身体の事を考えてくれている紗雪の言葉に、レイモンドは反論が出来なくなってしまう。

 「・・・・・・分かった。今日の晩ご飯は生ハムの冷製パスタでいい。その代わり、コーンスープを希望する」

 「ええ。今日の夕食はそれで決まりね」

 まずは時間がかかるスープから作りましょうか

 紗雪の言葉を皮切りに、料理人達がスープ作りの準備を始める。





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