カフェ・ユグドラシル

白雪の雫

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⑰カステラの試食-1-

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 「凄い・・・」

 優美というより荘厳と言えばいいのだろうか。

 いや、優雅でありながら荘厳と表現するのが正しいのかも知れない。

 趣と歴史を感じさせながらも、周囲の風景に溶け込んでいる城に紗雪は驚きの声を上げる。

 「レイモンド様、サユキ様、お待ちしておりました」

 ランスロットかエレオノーラから事前に報告を受けていたのか、一人の老家令が門の前で二人を出迎える。

 「久しいな、クリフォード」

 「本当に・・・。あの、レイモンド坊ちゃまがこうして立派になられただけではなく、異世界の女人を伴侶として紹介する日が来るとは・・・」

 苦労した事で侯爵家に居た頃とは違い、レイモンドが人間として成長しているのだと感じ取ったクリフォードが、『爺や嬉しい!』と言わんばかりに感動の涙を流す。

 「クリフォード!お、俺と紗雪殿は・・・」

 母の前では恋人と言ってしまったが、実際のところ今の自分達の関係をどう言い表せばいいのか分からない。

 友達か?と聞かれたら、友達と答えられる。

 恋人か?と聞かれたら、どう答えたらいいのだろう?

 自分は紗雪に対して『好き』だの『愛している』だのと告白した事がない。

 しかし、紗雪を気に入っているのは確かだ。

 「レイモンドさん?」

 (・・・・・・)

 隣に居る紗雪を盗み見したレイモンドの顔が赤く染まる──・・・。










◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆










 「流石、侯爵家・・・」

 美奈子の隠居先の屋敷も凄いと思ったが、本宅はそれ以上だ。

 土地の高低差を利用して滝のように流れ落ちて行く荘厳な噴水、それと調和している緑豊かな自然と古代の神々や怪物の彫刻に紗雪は素直に感動していた。

 「父上に頼めば庭園を自由に見る事が出来るが、どうする?」

 「その前に、お茶会に出すお菓子を侯爵夫人に試食して貰うのが先だわ」

 「・・・・・・母上だけではなく、父上も今回の試食を楽しみにしているからな」

 夫人をメインとするお茶会に参加しないのに、父上の分も用意しなければいけないのか・・・

 レイモンドが溜め息を漏らす。

 「政務に疲れたロードクロイツ侯爵の、一時の休息の為のお菓子を作るのだと思えばいいじゃない」

 お二人が今日という日を、首を長くして待っているのだから早く行きましょ

 侯爵夫人が満足するかどうかは、レイモンドさんが作ったカステラにかかっているのよ!

 自分も協力するからと、笑顔を浮かべながら紗雪はレイモンドの手を引いて侯爵夫人が待つ屋敷へと向かう。





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