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⑮お茶会の飲み物とスイーツ-2-
しおりを挟むパウンドケーキ、クッキー、ワッフル、タルト、チーズケーキ
お茶会で出すお菓子もエレオノーラに試食して貰うつもりでいるのだが、それ等を一度に出してしまえば太ってしまう可能性が高い。いや、太ると断言してもいい。
「今日のおやつはパウンドケーキ、明日はクッキー、明後日はワッフルという風に出した方がいいだろうな」
「そうね。でも、甘いお菓子を食べたいけど、太るのは嫌というのが女心なのよ。私個人としては、生クリームとバターを使うスイーツは避けた方がいいと思っているの」
紗雪の言いたい事は何となくだが分かる。
「・・・和菓子という奴を出すつもりでいるのか?」
「生クリームとバターを使わない和菓子なら大丈夫かな?と思っているのだけど、そのようなお菓子があるかどうかを探しているの」
レイモンドは腕を組んで考える。
和菓子というのは紗雪の故郷である日本の伝統的なお菓子で、彼女の話によると、熟練の職人であればお菓子一つで季節や慶事を表現するらしい。
レイモンドは紗雪がネットショップで購入した贈答用の上生菓子を食べた事がある。
確かに上生菓子は見た目が美しくて華やかだった。
生クリームとバターを使っていないのに甘くて季節感溢れる和菓子であれば、お茶会に出すお菓子として相応しいと思う。
しかし、それを作れるか?と聞かれたら、自分達では作れないと答える事が出来る。
紗雪とレイモンドが作れるのは、おはぎとどら焼きくらいだし、何より和菓子には欠かせない小豆や糯米をキルシュブリューテ王国では栽培していないのである。
仮にそれ等があったとしても、職人による芸術とでも言うべき季節の花や果物を素人である自分達が表現するのは不可能だ。
「・・・・・・ねぇ、レイモンドさん。カステラはどうかしら?」
「カステラ・・・?カステラというのは確か、パウンドケーキに似た形をしているケーキだったような・・・」
ネットショップで購入したカステラを食べた事があるレイモンドが、どのような味だったかを思い返す。
素朴な甘さで、しっとりとした食感だった。
「現代と言えばいいのか・・・二十一世紀の日本では気軽に食べられるお菓子だけど、昔は天皇や将軍といった特別な立場にある者か財力がある武士や商人しか食べられない高級な食べ物だったし、将軍自らが作って家臣達に振る舞ったというエピソードがあるくらいよ」
そのようなお菓子だったら、侯爵夫人が主催するお茶会に出すに相応しいと思うのだけど・・・どうかしら?
あのカステラというお菓子に、そのようなエピソードがある事を知らなかったレイモンドは素直に驚く。
「カステラを作るのに必要な材料は何か分かるか?」
「確か、卵と砂糖と小麦粉と蜂蜜・・・だったはず」
「お茶会で出すお菓子はカステラで決まりだな」
「レイモンドさん!そんなにあっさり決めてもいいの?」
「ああ。カステラを作る為に必要な材料の全てがキルシュブリューテ王国にあるし、何より生クリームとバターを使わないからな」
カステラは和菓子の一種という事もあるが、何と言っても異世界のお菓子だ。
新しいもの、珍しいものに目がない貴婦人達の好奇心と虚栄心が満たされるだけではなく、異世界のお菓子であれば彼女達の舌を満足させられるような気がする。
「紗雪殿はカステラを作った事があるのか?」
「ないわね」
作り方は本を見れば何とかなると思うのだが、紗雪は実際にカステラを作った事がないのだ。
見栄を張って『出来る』と答えてしまったら後から大変な目に遭うので、出来ない事は出来ないと正直に答える。
「今から一緒にカステラを作らないか?」
「ええ」
レイモンドの言葉に紗雪は笑みを浮かべて頷く。
「でも、カステラを作る為に必要な材料があったかな?その前に・・・」
二~三日もすればお茶会に出すお菓子が出来るかも知れないので、その時はお菓子を持参して侯爵邸を訪れる旨を手紙へと書いていく。
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