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⑮お茶会の飲み物とスイーツ-1-
しおりを挟むこれはキルシュブリューテ王国だけではなく近隣諸国にも言える事だが、食事には拘りと関心がなく生きていく為に口に入ればそれでいいという考えなので日本と比べたら食文化が発展していない。
キルシュブリューテ王国とウィスティリア王国に限って言えば、確かに料理は【不味い】の部類に入る。
食堂やバルで出された料理は単に焼いただけの肉か、煮込んだだけの野菜、チーズと硬いパンは切っただけ。当然、それを食べる冒険者や旅人の顔は楽しそうでなかった。
(私が作ったサンドイッチやシチューを食べていた時のレイモンドさん達って凄く嬉しそうだったから、不満を持っているのは確かなのよね)
王侯貴族であれば高価な調味料や香辛料をふんだんに使ったり、盛り付けにも気を遣っているとレイモンドは言っていたが、それでも紗雪から見れば不味い事に変わりはない。
それなのに、何故この国の料理人達は美味しい料理を作ろうと思わなかったのだろうか?
(・・・・・・・・・・・・)
食に拘りと関心がないというより、生きる為に食べるだけという考えだからこそ、料理人達は美味しい料理を作ろうという気がないのかも知れない。
(古代エジプトやローマのように高レベルな文化な国があったけど、何らかの理由で滅んだから食文化の発展が途絶えてしまったのかしら?)
その辺りに関しては、キルシュブリューテ王国の歴史を勉強するしかないだろう。
(遺跡にでも行って霊視した方が手っ取り早いかしら?)
「紗雪殿。母上のお茶会に出す茶菓についてだが、何を出すか決まったか?」
「決まらないわね」
お茶会と言う名の戦場で、どのようなお菓子を出せばいいのだろうか?
ネットショップで購入した本を見ながら二人は頭を悩ませる。
「ねぇ、レイモンドさん。レイモンドさんって侯爵家の三男だから王宮やどこかの貴族が主催していたサロンやお茶会に参加した事があると思うのだけど、その時はどんなお菓子が出ていたの?」
「そうだな・・・」
果物を包んで揚げたパイ、クレープ、タルト、焼き菓子、ケーキといったところだが、大量に砂糖を使っていたので喉が焼け付くように甘いだけではなく、焼き菓子とケーキはその時に出されたコーヒーや果実水、ハーブティーに浸さないと食べられない固さだった事を紗雪に教える。
(コーヒーがあるんだ)
仕入れ先がどこなのか分からないが、キルシュブリューテ王国にコーヒーがあるという事実に紗雪は思わず驚いてしまった。だが、同時に地球に似ている部分が幾つもあるのだから、フリューリングにコーヒー豆があっても不思議ではないと思い直す。
元の世界では、昔は薬として重宝されていたコーヒー。
昔のキルシュブリューテ王国ではどうだったのか分からないが、コーヒー豆を見つけた迷い人がコーヒーを嗜好品として広めたのかも知れない。
「ロードクロイツでは、どのようにしてコーヒーを飲んでいるの?」
粉にしたコーヒー豆を水から煮出すのか、ドリップで抽出しているのかが分からない紗雪が尋ねる。
「水から煮出したコーヒーの上澄みだけをカップに移して飲んでいるな」
「その時に出されたコーヒーって牛乳が入っていたの?」
「いや、入ってなかったから苦かったな」
当時のレイモンドにとってコーヒーはそのままの形で飲む苦い物だったという印象しかなかった。
だが、紗雪と出会った事でコーヒーに牛乳を加えるというカフェオレやカフェラテを知ったレイモンドは、もっと早くに牛乳を入れて飲む方法を思い付いていたら良かったと愚痴を零す。
「侯爵夫人のお茶会に参加するのは大人の女性よね?やはり、飲み物はハーブティーがいいかしら?それとも、コーヒー?」
「コーヒーがいいような気がするな」
「レイモンドさん、コーヒーを出すとなったら牛乳を入れても問題ないかしら?」
コーヒーを出す場合、エレオノーラが主催するお茶会の招待客の中には、コーヒーの苦味が苦手な夫人もいるのではないだろうか?
そんな彼女達の為にカフェオレかカフェラテを出したいという紗雪の提案に、自分はカフェオレとカフェラテが好きなので問題ないが、キルシュブリューテ王国では・・・というより近隣諸国でもコーヒーをそのままか、砂糖を入れて飲むのが普通なので果たして彼女達にそれが受け入れられるかどうかが見えないレイモンドが難色を示す。
「コーヒー、カフェオレ、カフェラテを母上に飲んで貰ってから判断して貰うしかないな」
「そうするわ。次にお菓子だけど──・・・」
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