カフェ・ユグドラシル

白雪の雫

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⑭その頃の聖女-1-

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※聖女よりも紗雪達視線で語られているので、タイトル詐欺かも知れないけど





 式神を出すその前に、紗雪は四人の瞼に手を翳す。

 「紗雪殿?貴女は今、何をしたのだ?」

 「私の霊力を注ぎました」

 これは霊感のない人間が修行しなくても霊が見えるようになる術の一つであるが、あくまでも一時的な措置でしかない。

 その事を説明した上で紗雪は、懐から取り出した紙を媒体にして式神を召喚する。

 「これは・・・鳥の精霊?」

 目の前に出現した一羽の白い鳥を目にした四人が声を上げて驚く。

 「違います。これは式神といって陰陽師が使役する鬼神・・・使い魔のようなものという認識でいいと思います」

 紗雪の手から離れた式神がウィスティリア王国の聖女の元へと飛んでいく。









◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆










 「紗雪殿、これを使えば密偵を送らなくても相手の・・・例えば政敵や敵軍の内情を探るのは可能なのか?」

 水を張った桶に映る景色を見ているランスロットが紗雪に尋ねる。

 「可能ですよ」

 但し、相手側に陰陽師のような存在・・・こっち風に言えば精霊使いになるのだろうか?が居れば普通の人間には認識できないはずの式神が見えるし、場合によっては破られる事もある。

 相手の力量にもよるが、呪詛返しによって術者が傷を負うだけではなく最悪の場合は命を落とすのだと、式神を使うメリットとデメリットをランスロットに教える。

 「紗雪殿!今の貴女は命を懸けているという事なのか?!」

 「相手は邪神・サマエルという小物を前に粗相をした、実戦経験はおろかまともに戦闘訓練もしていない性女だもの。命を懸ける程でもないわ」

 式神を使う事の危険性に気が付いたレイモンドに、仮に術が破られたとしても呪詛返しから身を護る術があるのだと紗雪が話す。

 「ウィスティリア王国やキルシュブリューテ王国には召喚術を使える宮廷魔術師がいるのですよね?彼等だったら、私のように式神を送らなくても相手を探る術を使えるのではないのですか?」

 「そのような術があれば、我等は密偵を使わずに済むと思うのだが?」

 あ~っ・・・

 「言われてみればそうですね」

 (異世界人を拉致する大掛かりな術の研究より、スパイ的な術を磨く事に力を入れろ!)

 紗雪は心の中で愚痴を零す。








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