カフェ・ユグドラシル

白雪の雫

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④王都へ(前編)

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 「コントラ商会に行って欲しい?会頭からそのような依頼があったの?」

 コントラ商会というのは、王都でも一・二位を争う大富豪であり、国内に幾つも店舗がある大店だ。

 商品を卸した後、商人ギルドの受付に言われた紗雪は戸惑いの表情を浮かべる。

 受付の話によると、日焼け対策に悩む奥方と娘の為に会頭が日焼けから護る帽子を購入したらしい。

 「帽子なら王都にも売っていますよね?」

 「実はですね・・・会頭の奥方様が、スノーさんが卸している帽子を王都でも貴族用と平民用として売りたいと思っているらしいのです」

 後、奥方様がスノーさんの卸した帽子は他の帽子と比べたら日焼け止め効果が群を抜いて高いから気に入っているというのも理由の一つですし、帽子をレース等で飾れば富豪用としても売れるかも知れないと考えているみたいですよ

 「でも、平民向けとして売っている帽子が富豪向けとして売れるかしら?」

 貴族が要らなくなった、或いは型が古くなったという理由で古着屋に服を売る事はあっても、元から平民向けとして売っていた商品を買うだろうか?

 「スノーさん!お願いします!どうか、この話を受けて下さい!!」

 「この話を受けるか受けないかは一先ず置いといて、どうして会頭の奥方は私の事を知ったの?」

 受付の答えはこうだった。

 帽子専門店・サルトの店主であるアーサーは紗雪から卸している事は伝えていないが、アーサーが商人ギルドにコントラ商会の奥方が帽子を自分の商会にも卸して欲しい事を伝えたのだ。

 (つまり、奥方自身は私の事を知らないのね・・・)

 紗雪自身が会頭の奥方がどのような人物であるかを知らないように、奥方も紗雪がどのような人物であるかを知らないのだ。

 プライドが高く傲慢なのかも知れないし、商会の奥方だからこそ腰が低く質素倹約を旨にしているのかも知れない。

 (こればかりは、直接会って霊視するしかないわね。コネも欲しいし・・・)

 大商会の奥方というだけで彼女がこういう人物だと決めつけてはいけないと分かっている紗雪は、この話を引き受ける事にしたのだった。










◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆










 女が一人で旅をするのは危険なので、紗雪は冒険者ギルドに護衛の依頼を出した。

 内容はこうだ。





 依頼:グラナードから王都まで及び王都からグラナードまでの護衛

 報酬:二十シルバ/人日

 条件:生活魔法を使える人





 「皆さんの食事と、宿に泊まれた時の代金は私の方で出します」

 「分かりました。馬車であれば往復で十四~五日、徒歩であれば二十八~三十日になりますね。どういたしますか?」

 「そうね・・・。徒歩でお願い出来ますか?」

 乗合馬車を使えば徒歩の半分の日程で終わる。

 乗合馬車は山賊や盗賊の類に襲われる可能性が高いというのも理由の一つだが、本当の理由は食事にある。

 旅行中の自分達の食事は状況にもよるが、今回の旅に向けてマジックポーチに作り置きする温かい料理と飲み物、デザートを用意するつもりだ。

 硬いパン、チーズ、干し肉があれば豪華だと言われている中、出来立ての料理を口にしている自分達を目にしようものなら、同乗者はどう思うであろうか。

 お金様を払ってくれる人達の分は用意するつもりでいるが、自分からマジックポーチを強奪しようという輩が出てくる可能性も否定できない。

 だから紗雪は徒歩を選んだ。

 「畏まりました。依頼を受けて下さる冒険者が見つかりましたら、スノー様に連絡いたします」

 紗雪が出した依頼を受け付けた受付嬢は笑顔で受け取ったのだった。










◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆










 「つ、疲れた~」

 コロッケサンド、照り焼きチキンサンド、ロースカツサンド、フィレカツサンド、ハムカツサンド、厚焼き玉子サンドといった惣菜系のサンドイッチ、フルーツクリームサンド、ジャムサンドといったデザート系のサンドイッチ、ポトフ、クラムチャウダー、ポタージュスープ、ミネストローネといったスープ、ビーフシチュー、クリームシチュー等を家に帰るなり大量に作りマジックポーチに入れた紗雪。

 何時ものように店に卸す商品を購入した後、風呂に入って一日の疲れを取るのだった。








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