カフェ・ユグドラシル

白雪の雫

文字の大きさ
上 下
9 / 454

③卸しで稼いでいます-1-

しおりを挟む










 一年後

 「イリスさん、ジュリアさん、おはようございます。注文の品をお持ちしました」

 紗雪が入ったのは、キルシュブリューテ王国のグラナード辺境伯が治める地に建つアパレルショップ・テイラー。

 庶民向けの衣類を中心に扱っており、イリスとジュリアという二人の女性ならぬゴリマッチョなオネエで経営しているのだが、女よりも女心が分かるのか、男性よりも女性で賑わう店である。

 「おはよう、サユキ・・・いえ、スノーちゃん」

 「花柄の白いチュールレースとフリルレースでしたね?」

 「ええ、そうよ」

 「白のレースが切れかけていたから、助かったわ」

 某大御所声優のように二人の声はイケボだな~と思いながらも、オネエ達が注文した手芸用品をマジックポーチから出していく。

 「スノーちゃんのところのレースは本当に素敵よ」 

 「これをブラウスの襟やスカートの裾に付けるだけで、普段着がお洒落になるもの♡」

 「スノーちゃんのおかげでうちも儲かっているわ」

 「私も街の皆さんのおかげで、こうして卸しで食べていけるのですから」

 これぞ、ウィンウィンって奴ですよ

 「ねぇ、スノーちゃん。明日は黒のチュールレースとプリーツレース、それから・・・刺繍糸と手縫い糸を持って来てくれないかしら?」

 「ご注文、確かに承りました」

 注文した商品を受け取ったのを確認した紗雪はアパレルショップ・テイラーを出ると、次の目的地へと向かう。










◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆











 アパレルショップ・テイラーから歩く事、十数分

「ソアラさん、おはようございます。注文の品の日焼け止めクリームをお持ちしました」

 次に紗雪が入ったのは、メディカルショップ・アポロだ。

 「おはよう、スノーちゃん」

 店主であるソアラという中年女性が紗雪を出迎える。
 
「スノーちゃんが卸してくれる日焼け止めクリームは、ちょっとした贅沢品だけど女性だけではなく男性にも人気があるの」

 明日は、今日の倍の数を卸してくれないかしら?

 それだけではなく、歯ブラシと歯磨き粉の在庫が少なくなってきているから日焼け止めクリームと一緒に持って来て欲しいと、マジックポーチから注文した商品を出していく紗雪にソアラが話しかける。
 
「ご注文、確かに承りました」

 注文した商品を受け取ったのを確認した紗雪はメディカルショップ・アポロを出ると、次の目的地へと向かうのだった。







※オネエな二人はイリスとジュリアと名乗っているけど、本名はアーノルドとデビットです。
うっかり本名で呼んでしまったら、前線で戦っていた元騎士によるドスの効いた声で凄まれる+喧嘩上級者のメンチ切りで脅されるので、街の住人達は二人をイリスとジュリアで呼んでいます。






しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

聖女のおまけです。

三月べに
恋愛
【令嬢はまったりをご所望。とクロスオーバーします。】  異世界に行きたい願いが叶った。それは夢にも思わない形で。  花奈(はな)は聖女として召喚された美少女の巻き添えになった。念願の願いが叶った花奈は、おまけでも気にしなかった。巻き添えの代償で真っ白な容姿になってしまったせいで周囲には気の毒で儚げな女性と認識されたが、花奈は元気溌剌だった!

召喚聖女に嫌われた召喚娘

ざっく
恋愛
闇に引きずり込まれてやってきた異世界。しかし、一緒に来た見覚えのない女の子が聖女だと言われ、亜優は放置される。それに文句を言えば、聖女に悲しげにされて、その場の全員に嫌われてしまう。 どうにか、仕事を探し出したものの、聖女に嫌われた娘として、亜優は魔物が闊歩するという森に捨てられてしまった。そこで出会った人に助けられて、亜優は安全な場所に帰る。

妹と寝たんですか?エセ聖女ですよ?~妃の座を奪われかけた令嬢の反撃~

岡暁舟
恋愛
100年に一度の確率で、令嬢に宿るとされる、聖なる魂。これを授かった令嬢は聖女と認定され、無条件で時の皇帝と婚約することになる。そして、その魂を引き当てたのが、この私、エミリー・バレットである。 本来ならば、私が皇帝と婚約することになるのだが、どういうわけだか、偽物の聖女を名乗る不届き者がいるようだ。その名はジューン・バレット。私の妹である。 別にどうしても皇帝と婚約したかったわけではない。でも、妹に裏切られたと思うと、少し癪だった。そして、既に二人は一夜を過ごしてしまったそう!ジューンの笑顔と言ったら……ああ、憎たらしい! そんなこんなで、いよいよ私に名誉挽回のチャンスが回ってきた。ここで私が聖女であることを証明すれば……。

お飾りの聖女は王太子に婚約破棄されて都を出ることにしました。

高山奥地
ファンタジー
大聖女の子孫、カミリヤは神聖力のないお飾りの聖女と呼ばれていた。ある日婚約者の王太子に婚約破棄を告げられて……。

辺境地で冷笑され蔑まれ続けた少女は、実は土地の守護者たる聖女でした。~彼女に冷遇を向けた街人たちは、彼女が追放された後破滅を辿る~

銀灰
ファンタジー
陸の孤島、辺境の地にて、人々から魔女と噂される、薄汚れた少女があった。 少女レイラに対する冷遇の様は酷く、街中などを歩けば陰口ばかりではなく、石を投げられることさえあった。理由無き冷遇である。 ボロ小屋に住み、いつも変らぬ質素な生活を営み続けるレイラだったが、ある日彼女は、住処であるそのボロ小屋までも、開発という名目の理不尽で奪われることになる。 陸の孤島――レイラがどこにも行けぬことを知っていた街人たちは彼女にただ冷笑を向けたが、レイラはその後、誰にも知られずその地を去ることになる。 その結果――?

三回も婚約破棄された小リス令嬢は黒豹騎士に睨まれる~実は溺愛されてるようですが怖すぎて気づきません~

鳥花風星
恋愛
常に何かを食べていなければ魔力が枯渇してしまい命も危うい令嬢ヴィオラ。小柄でいつも両頬に食べ物を詰めこみモグモグと食べてばかりいるのでついたあだ名が「小リス令嬢」だった。 大食いのせいで三度も婚約破棄されてしまい家族にも疎まれるヴィオラは、ひょんなことからとある騎士に縁談を申し込まれる。 見た目は申し分ないのに全身黒づくめの服装でいつも無表情。手足が長く戦いの際にとても俊敏なことからついたあだ名が「黒豹騎士」だ。 黒豹に睨まれ怯える小リスだったが、どうやら睨まれているわけではないようで…? 対照的な二人が距離を縮めていくハッピーエンドストーリー。

聖女業に飽きて喫茶店開いたんだけど、追放を言い渡されたので辺境に移り住みます!【完結】

青緑
ファンタジー
 聖女が喫茶店を開くけど、追放されて辺境に移り住んだ物語と、聖女のいない王都。 ——————————————— 物語内のノーラとデイジーは同一人物です。 王都の小話は追記予定。 修正を入れることがあるかもしれませんが、作品・物語自体は完結です。

スキルが農業と豊穣だったので追放されました~辺境伯令嬢はおひとり様を満喫しています~

白雪の雫
ファンタジー
「アールマティ、当主の名において穀潰しのお前を追放する!」 マッスル王国のストロング辺境伯家は【軍神】【武神】【戦神】【剣聖】【剣豪】といった戦闘に関するスキルを神より授かるからなのか、代々優れた軍人・武人を輩出してきた家柄だ。 そんな家に産まれたからなのか、ストロング家の者は【力こそ正義】と言わんばかりに見事なまでに脳筋思考の持ち主だった。 だが、この世には例外というものがある。 ストロング家の次女であるアールマティだ。 実はアールマティ、日本人として生きていた前世の記憶を持っているのだが、その事を話せば病院に送られてしまうという恐怖があるからなのか誰にも打ち明けていない。 そんなアールマティが授かったスキルは【農業】と【豊穣】 戦いに役に立たないスキルという事で、アールマティは父からストロング家追放を宣告されたのだ。 「仰せのままに」 父の言葉に頭を下げた後、屋敷を出て行こうとしているアールマティを母と兄弟姉妹、そして家令と使用人達までもが嘲笑いながら罵っている。 「食糧と食料って人間の生命活動に置いて一番大事なことなのに・・・」 脳筋に何を言っても無駄だと子供の頃から悟っていたアールマティは他国へと亡命する。 アールマティが森の奥でおひとり様を満喫している頃 ストロング領は大飢饉となっていた。 農業系のゲームをやっていた時に思い付いた話です。 主人公のスキルはゲームがベースになっているので、作物が実るのに時間を要しないし、追放された後は現代的な暮らしをしているという実にご都合主義です。 短い話という理由で色々深く考えた話ではないからツッコミどころ満載です。

処理中です...