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③卸しで稼いでいます-1-
しおりを挟む一年後
「イリスさん、ジュリアさん、おはようございます。注文の品をお持ちしました」
紗雪が入ったのは、キルシュブリューテ王国のグラナード辺境伯が治める地に建つアパレルショップ・テイラー。
庶民向けの衣類を中心に扱っており、イリスとジュリアという二人の女性ならぬゴリマッチョなオネエで経営しているのだが、女よりも女心が分かるのか、男性よりも女性で賑わう店である。
「おはよう、サユキ・・・いえ、スノーちゃん」
「花柄の白いチュールレースとフリルレースでしたね?」
「ええ、そうよ」
「白のレースが切れかけていたから、助かったわ」
某大御所声優のように二人の声はイケボだな~と思いながらも、オネエ達が注文した手芸用品をマジックポーチから出していく。
「スノーちゃんのところのレースは本当に素敵よ」
「これをブラウスの襟やスカートの裾に付けるだけで、普段着がお洒落になるもの♡」
「スノーちゃんのおかげでうちも儲かっているわ」
「私も街の皆さんのおかげで、こうして卸しで食べていけるのですから」
これぞ、ウィンウィンって奴ですよ
「ねぇ、スノーちゃん。明日は黒のチュールレースとプリーツレース、それから・・・刺繍糸と手縫い糸を持って来てくれないかしら?」
「ご注文、確かに承りました」
注文した商品を受け取ったのを確認した紗雪はアパレルショップ・テイラーを出ると、次の目的地へと向かう。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
アパレルショップ・テイラーから歩く事、十数分
「ソアラさん、おはようございます。注文の品の日焼け止めクリームをお持ちしました」
次に紗雪が入ったのは、メディカルショップ・アポロだ。
「おはよう、スノーちゃん」
店主であるソアラという中年女性が紗雪を出迎える。
「スノーちゃんが卸してくれる日焼け止めクリームは、ちょっとした贅沢品だけど女性だけではなく男性にも人気があるの」
明日は、今日の倍の数を卸してくれないかしら?
それだけではなく、歯ブラシと歯磨き粉の在庫が少なくなってきているから日焼け止めクリームと一緒に持って来て欲しいと、マジックポーチから注文した商品を出していく紗雪にソアラが話しかける。
「ご注文、確かに承りました」
注文した商品を受け取ったのを確認した紗雪はメディカルショップ・アポロを出ると、次の目的地へと向かうのだった。
※オネエな二人はイリスとジュリアと名乗っているけど、本名はアーノルドとデビットです。
うっかり本名で呼んでしまったら、前線で戦っていた元騎士によるドスの効いた声で凄まれる+喧嘩上級者のメンチ切りで脅されるので、街の住人達は二人をイリスとジュリアで呼んでいます。
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