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2話
しおりを挟むあれは、アーノルドが八歳を迎えて間もない頃だった。
『姉上~』
父親と共に庭園を歩いているジェラルディンの後ろ姿を見かけたアーノルドが二人の元に駆け寄ったのだが『何奴!?』という台詞と共に、俺の背後を取るんじゃねぇ!的な感じで姉から強烈な蹴りを食らってしまったのだ。
『あら、アーノルドじゃない。ゴメンなさいね、つい癖で。お姉様の後ろを取ってはいけないと何度も言っているでしょ?』
(あんた、どこの暗殺者だよ!?)
受け身を取った事でダメージを軽減しつつ心の中でツッコミを入れたアーノルドに、ジェラルディンが天使の笑みを向けて謝罪の言葉を口にする。
『二人共・・・その気になれば世界を狙えそうだな』
ジェラルディンの蹴りと、娘の蹴りを食らってもケロッとしているアーノルドを目にした父親がボソッと呟くのだった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
(あの姉の蹴りを含めた攻撃に耐える為に身体を鍛えた結果・・・)
『私、脱いだら凄いんです』という表現が似合うと言えばいいのだろうか。
アーノルドは『僕の食事は薔薇の花弁を浮かべた紅茶だけだよ』という台詞が似合う白馬の王子様的な顔と、鍛錬後の着替えで自分の身体を見てしまった男共からは兄貴呼ばわりされるだけではなく『スゲー!兄貴、かっけー!』『俺、兄貴にだったら初めてを捧げてもいいです♡』『兄貴、俺の処女を貰って下さい!』と、羨望の眼差しを向けられるゴリマッチョに近い肉体を持つ青年になってしまったのだ。
(俺は女の子が好きなんだけど・・・)
むさ苦しい男共に言い寄られている事を思い出してしまったアーノルドは思わず両手で自分の身体を抱いて震わせる。
(あの身体能力とこぶし大の石であれば粉々に出来るレベルの怪力。それに加えて風呂から上がった後は左手を腰に当ててキンキンに冷えたコーヒー牛乳やフルーツ牛乳、時たまビールを一気飲みするんだよな~)
しかも、その時の台詞が『かーーーっ!!この一杯の為に生きてるーーーっ!!!』なのだ。
それってどこの親父だよ!とツッコミを入れたくなるのだが、それも貴族令嬢として、商人として抱えているストレス解消法だと思えば可愛いものだ。
可愛いはずだ、多分。
・・・・・・そうだと思いたい。
それはともかく、ジェラルディンに結婚して貰わないとアーノルドは婚約者のヴァレリーと結婚出来ないのだ。
結婚するのは年長者からという、他人が口出し出来ない謎のお家ルールによって何時まで経っても結婚が出来ないアーノルドは一刻も早く結婚相手を見つけて欲しいとジェラルディンに訴える為に姉の部屋へと向かう。
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