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⑱エピローグ
しおりを挟む甥と姪、甥孫と姪孫は可愛いし、それなりに愛情はある。
だが、それも我が子達とは比べ物にならないと、遊び疲れて眠っているセレスティーネとファナイティスの寝顔を眺めているアイドネウスは心の底からそう思う。
「アイドネウス、お茶が入ったわよ」
「ああ」
二人分のアイスミルクティーを持って子供部屋に入って来たのはミストレインだ。
ミストレインはアイスミルクティーをテーブルに置いていく。
「久し振りのピクニックにはしゃいで疲れて眠ってしまったティーネをおんぶして家まで歩いたのだから・・・疲れてない?」
「あれくらい何ともない」
それどころか、我が子が成長している事を実感したのだと、ベッドの近くにある椅子に腰を下ろしたアイドネウスがアイスミルクティーを口にしながらミストレインに話す。
こうして平穏な日々を過ごせるようになるまで色々あった。
見た目が良く淑女としてのマナーと教養があったフローラは娼婦になったのだが、元王女にして皇帝の元側室というプライドが邪魔したのか、風俗嬢に落ちてしまった事はミストレインも知っている。
その後のフローラがどうなってしまったのだろうか──・・・。
(フローラの事だから生き延びていそうな気がするわね)
後宮という伏魔殿で一時はカルロスに気に入られていたフローラはエピメテスを儲けたのだ。
強かになってしまったフローラであれば、どこかのお大尽の愛妾になっているような気がする。
(ヒロインを自称していたカサンドラに夢中になっていた、メンタルがあの店で売っているプリンよりも柔い馬鹿皇帝達は確か・・・)
アイドネウスが教えてくれた情報を思い出す。
何の罪もないフローラとエピメテスを殺そうとしたカルロスは病死したとも、罪を犯した皇族を幽閉する通称鳥籠とも呼ばれている冷暗宮に連れられたとも発表されているが事実は異なる。
悪女の言いなりになっているカルロスに国の舵取りを任せる訳にはいかないと、心ある臣下達の手によって毒殺されたのだ。
カルロスの跡を継いで皇帝になったのは先帝の弟──つまり、カルロスから見て叔父という人物であるらしい。
また、カルロスの側近であったギュスターヴ達はというと、婚約者であった女性の両親から婚約破棄を言い渡されただけではなく親を頼らず自力で多額の慰謝料を払うように新帝から言い渡された。
ちなみにこれは勅命なのでロードライト帝国人であれば逆らう事は出来ない。
ギュスターヴ達はきついが短期間で大金を得られる遠洋漁業や鉱山で働く事になった。
だが、貴族子息にして次期当主という立場にあるからなのか、甘やかされて育った彼等に根性というものなどない。
過酷な労働環境と生活環境によってカルロスの側近であった三人は主と同じ運命───つまり若くして命を落とすという運命を辿る事となった。
もし、霧雨 灯夜として生きていた前世を思い出さなかったら──・・・。
(!!)
ゲームのアストライアーと同じ運命を辿ってしまったところを想像してしまったミストレインは身体を震わせる。
「ミストレイン、どうかしたのか?」
ううん
「何でもない。ねぇ、アイドネウス。あなたと結婚して、こうしてセレスティーネとファナイティスが産まれた・・・」
ミストレインがベッドで眠っている我が子達を見てそう言った後、ある一言をアイドネウスに向ける。
「私を幸せにしてくれてありがとう」
「ミストレイン・・・」
「私はアイドネウスに幸せを与えて、幸せだと感じて貰えているのかしら?」
「勿論だ」
お前が側に居てくれる
その事実が俺を満たしてくれるんだ
「アイドネウス・・・」
ミストレインを抱き寄せたアイドネウスが妻に口付けを交わそうとしたその時──・・・。
「ふぇ・・・」
甘い雰囲気を壊すかのような泣き声が部屋に響く。
「「・・・・・・・・・・・・」」
「この泣き方は・・・おむつね」
アイドネウスから離れたミストレインは笑みを浮かべると、おむつを置いている場所へと向かった。
「おむつを取り替えるから待っててね」
おむつを片手に、気持ち悪くて泣いているファナイティスが要るベッドにやって来たミストレインが慣れた手つきで取り替えていく。
「空気を読むという事を覚えような、ティス・・・」
「う?」
おむつを替えた事で機嫌が良くなった我が子を抱いたアイドネウスが苦笑を浮かべているがその口調は優しいものだった。
(こうやって・・・何でもない日常こそが幸せというものなのね)
ファナイティスをあやすアイドネウスの姿を見て心の底からそう思うミストレインであった。
※セレスティーネとファナイティスはエピメテスが成人して家を出てから作った子供で、ミストレインは二人をアラフォーで産んでいます。
ミストレインの見た目だけではなく身体機能は十代後半から二十代だからアラフォーだと言われても説得力ないかも知れないけど。
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