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③小さなお茶会=憂さ晴らし-2-

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 エレノアとアリーズによる一触即発の状態であるにも関わらず、後宮のある一角では気の置けない友人だけによる小さなお茶会が催されていた。

 「ツナのサンドイッチ、美味しいですわ」

 「卵のサンドイッチも美味しいですよ」

 「私はチョコチップのスコーンが好きですわ」

 「フルーツのタルトは濃厚なカスタードと果物の酸味がマッチしていますのね」

 流石、一流の冒険者!!

 世界各地を旅しているだけあって彼女達は今まで食べた事がない、マルガレーテが作った料理に舌鼓を打っていた。

 「気に入って頂けて嬉しいですわ」

 話のネタと暇潰しになるという理由だけで後宮に入ったマルガレーテは、彼女達の言葉に笑顔を浮かべながら紅茶を口に運ぶ。

 「皆様、ご存じですか?この前のエレノア様とアリーズ様の──・・・」

 本日の小さなお茶会に参加している側室の一人であるグレースが扇で口元を隠しながら小声で話す。

 「ええ。私もその場に居合わせていましたもの」

 「私もですわ」

 「お二方の言い争いは凄まじいものでしたわね」

 「最後は殴り合いになっていましたもの」

 その時の事を思い出してしまったのか、笑い出してしまった四人はその時の事を思い出す。









 『そのダイヤの指輪は、陛下が私の為に用意して下さったものなのよ!今すぐ返しなさい!!』
 
 『嫌よ!だって、陛下があたしに着けて欲しいと言ってくれたのだから、あたしが貰うのは当然じゃない!!』

 『何ですって!?この、泥棒猫が!!』

 今のアリーズが着けているダイヤの指輪は、元を正せばアズラエルがエレノアに贈ろうとしていたものだった。

 だが、今のアズラエルにはエレノアに対して嘗て抱いていた恋愛感情など欠片もない。

 寧ろ、実家の権勢を笠に着て傲慢に振る舞い、嫌がる自分に対して愛情を押し付ける重い女だとしか思えないでいるのだ。

 アズラエルの、自分への気持ちが消えている事など知らないエレノアは、自分の物を盗まれたと罵りながらアリーズに対して平手打ちを食らわす。
 
 (・・・!?)

 自分が何をされたのか理解出来ないアリーズは呆然と立ち尽くしてしまっていた。
 
 『そんなんだから、陛下に愛想を尽かされるのよ!』

 今の自分が後宮で権勢を誇っているのは、アズラエルの寵姫だからだ。

 アズラエルに見捨てられたら最後だと思ったアリーズは、エレノアの頬を平手で叩く。
 
 『下賤な農民の分際で・・・後宮を闊歩しているなんて生意気なのよ!!!』
 
 『性格が悪いから陛下に捨てられるのよ!!!』
 
 『陛下が私を見捨てるなんてありえないの・・・よ!!!』

 互いの侍女達が止めるのも聞かず、エレノアとアリーズは回廊で罵り、そして叩き合う。

 最終的に、二人の争いは殴り合いへと発展していった───。










◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆










 「あれ・・・面白かったですわね」

 「本当に。下町の演劇を見ているようで楽しかったですわ」

 当人達は真剣そのものだが、アズラエルの事など何とも思っていない彼女達にしてみれば喜劇以外の何物でしかないのだ。

 「後宮にいる間は好きな時に読書やお茶を楽しめるし、気が向いた時にスパを楽しんだり、マッサージを受ける事が出来ますもの」

 皇后のように政に関わらなくていいし、飛ぶ鳥を落とす勢いのアリーズとは異なり後宮に入ってから一度もアズラエルの訪れがないにも関わらず、好きなだけドレスやアクセサリーは買って貰えるし、こうして好きな時に馬の合う友人と好きな事を楽しめる側室って最高だな~と思いながらマルガレーテはグレース達との談笑を楽しむ。






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