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③小さなお茶会=憂さ晴らし-1-

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 アズラエル=グレンヴィルは、今年の春に即位して間もない二十七歳の青年である。


 黒髪黒目で端正な顔立ち
 百七十七センチの長身に鍛えられている肉体


 冷静沈着で時には為政者として冷酷な判断も出来るアズラエルは、君主として立派なのだ。

 そんな彼には寵愛する妃がいた。

 アリーズという、金色の髪に緑色の瞳を持つ十七歳の農民の可愛らしい娘である。

 彼女は生活を支える為に帝都へ出稼ぎに出ていたのだが『陛下の妃になれば両親を楽にさせられる』という宦官の言葉に釣られて後宮入りしたのだ。

 ただですら政務で気が張り詰めているというのに、プライベートでも実家の権威を笠に着て高慢な態度を取っている妃・エレノアをはじめとする貴族令嬢達ではなく、素直で純朴なアリーズにアズラエルが心惹かれるのは当然であろう。

 そうなると、後宮では自然とある図式が出来上がってくる。

 すなわち、エレノアvsアリーズである。

 「ごきげんよう、エレノア様」

 「ごきげんよう、アリーズ様」

 互いの権勢を示すかのように、侍女を引き連れている二人は互いに笑顔を浮かべているが、両者の間には激しく静かな火花が飛び散っていた。

 貴族出身の娘達はエレノアを、平民出身の娘達はアリーズを支持しており、後宮の表面上は穏やかであるが水面下では二つの派閥が争っているのだ。

 「今の陛下は珍しい雑草に夢中になっているだけ」

 「エレノア様の仰る通りですわ!」

 「温室育ちの花には雑草のように体力がございませんもの。陛下の情熱を受け止めるのは不可能ですわ」

 「陛下の激しさは毎晩アリーズ様を寝不足にいたしますの」

 「アリーズ様には今宵の夜伽に向けての準備がございますので、失礼いたします」

 キィーーーーッ!!!

 ハンカチを噛みながら金切り声を上げるエレノアと侍女達を嘲笑いながら、アリーズ達は彼女達の前を通り過ぎる。






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