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⑦真祖と聖女-5-
しおりを挟む王宮の周辺に暗雲が立ち込めていたり、蝙蝠が飛び交っていたら【〇魔城〇ラキュラ】と思えてしまうのだが、支配者が真祖であるとはいえ目の前に聳え立つ建物は決して某ゲームのタイトルにもなっているあの城ではない。アーベント城なのだ。
「我等の未来の為に真祖を倒す!!」
「「「おーーっ!!」」」
(頭が痛い・・・)
脳筋特有のノリについていけないクリュライムネストラだけは頭を抱えている。
終焉の離宮の門の前で鬨の声を上げている侵入者達の様子を城外の一角に設置しているイビルゲイザーの一匹が、真祖が控えている玉座へと送っていた。
「人間という生き物は実に面白い」
イビルゲイザーを通して離宮の様子を眺めている、優雅な中にもどことなく野性的な雰囲気を感じさせる茶色の髪を持つ男が楽しそうに呟く。
男の名はレーヴェナード=プリンケプス=ロワール=アウスファーレン。
サクリフィス大陸を統べる吸血鬼の真祖にして吸血行為で人間を様々な妖魔へと変える事が出来る、クローチェ大陸では魔王とも呼ばれている不死者だ。
レーヴェナードはサクリフィス大陸の周辺を、シーサーペントやスキュラをはじめとする海の魔物と妖魔に護らせているが、運良くそれらから逃れて大陸に足を踏み入れた侵入者は富と名声目的にアーベント城へと攻めてくる。
まぁ、侵入者達は入り口の石像に扮しているガーゴイル、或いは終焉の離宮を護るモンスターと仕掛けている様々な罠によって始末されてしまうが。
その中に力のある聖人や聖女と呼ばれる者がいれば、吸血行為によって妖魔と化した人間を駒として利用する目的でレーヴェナード自らが赴く場合もある。
だが、【聖人】や【聖女】という肩書に見合った霊力を有しない人間では真祖の魔力に耐えられないのか、たった一回血を吸われただけで気が触れてしまうか、廃人になってしまうのだ。
そんな彼等には魔物の餌となるだけの未来が待っているだけである。
耐えて自我を保つ事が出来たとしても、二度三度と繰り返していくと、禁欲を貫いていた聖人や聖女と呼ばれていた人間が自我を保ったまま淫蕩を好む妖魔へと変化していく様を眺めるのはレーヴェナードにとって無聊の慰めの一つでもあった。
(我が君にも困ったものだ・・・)
レーヴェナードの側近であるデュラハンのレオパルドは英雄譚とやらを楽しんでいる子供のようにはしゃぐ主の姿に苦笑を浮かべるが、自分もまた侵入者が終焉の離宮を護るモンスターや様々なトラップに引っかかって命を落としていく様を見るのは面白いと思っているので強く言えなかったりする。
「今回の侵入者共は、どのように私を楽しませてくれるのかな?」
不死者とデュラハンが見守る中、一つの物語の幕が上がった。
※リオン達が立っていた門は対侵入者用のもの。本宮へと続く正門は別の場所にあります。
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