ノスフェラトゥ

白雪の雫

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⑦真祖と聖女-3-

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 マダム・ソニアの占いは百パーセントの確率で当たると、王都・エーヴィッヒでも評判が高い。

 当然、彼女の店には列が成しているので、リオン達は客に倣い並ぶ。

 どれくらい待っただろうか。

 「おやおや、お客さんは何をお探しかね?或いは誰かをお捜しかね?どれ、この婆が占って進ぜよう」 

 リオン達が占って貰う事になったので、ネクロマンサーを思わせる衣装を纏っている老婆が水晶に手を翳しながら何やら呪文を唱える。

 「お前さん達の未来は・・・・・・どうやら、そこの四人にとって大切な探し物は見つからないだけではなく妖魔になってしまうようだね。それと、杖を手にしているお前さんの未来は・・・人間ひとでありながら人間ひとでない存在になってしまうようだ」

 その証拠が水晶に出ているから覗いてごらん

 老婆にそう言われた四人は顔を水晶に近づける。

 「この・・・クソ婆が!!出鱈目を抜かすんじゃねぇ!!!」

 水晶の中の自分はインキュバスの姿で映っていたものだから、驚きと怒りで頭がいっぱいのリオンは老婆が纏っているローブを掴み殴ろうとするのだが、クリュライムネストラが手にしているアスクレピオスの杖で彼の頭を思いっきり殴る事で彼の行動を阻止した。

 「貴様、何しやがる!?」

 「当たるも八卦当たらぬも八卦と言ったのはリオンさんですよね?そのリオンさんが占い師を責めるのはお門違いというものです」

 それよりもお婆さん、私にも水晶を見せて下さい

 先に四人が顔を近づけた事で老婆の占い結果を見られなかったクリュライムネストラが水晶を覗き込む。

 水晶には今と比べたら随分と髪が伸びている自分が赤子を抱いている姿と、人間の美を超越している茶色の髪を持つ三十代後半くらいの男性が映っていた。

 未来の自分は彼との間に子供が出来るという解釈でいいのだろうか?

 (でも、水晶に映っている私はどこからどう見ても人間にしか見えないのだけど・・・?)

 老婆の言葉の意味が理解出来ないクリュライムネストラは首を傾げる。

 「嫌だ・・・あたいが猫人ワーキャットになるなんて」

 「僕が食人花になるなんて・・・」

 「私はエキドナになるの?」

 リオンのように老婆に襲い掛かろうとはしていないものの、ジェーン達もまた己の未来にショックを受けている。

 けっ!

 「帰るぞ」

 老婆の占いは信用していないが、最悪な未来しか見せなかったという事実に苛立ちを隠せないリオンは仲間に声を掛けると店を出て行く。

 「お婆さん、連れの無礼をお許し下さい」

 老婆に頭を下げた後、クリュライムネストラは代金を払うとリオン達の後を追いかけるように店を出て行くのだった。








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