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②咲夜の正体(仮)

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 (あんな軽い感じで別れを切り出された女って私くらいなものでしょうね・・・)

 イチゴ味の酎ハイを飲み干してしまった咲夜は、苺ミルク味のカクテルを口に運ぶ。

 (それよりも賢児、貴方ってアホなの!?お水の世界って男からお金を引き出す為であれば息をするように嘘を吐けて、自分が頂点に立つ為であれば他人を蹴落とすのが当たり前という弱肉強食の世界なのよ!!)

 生き馬の目を抜く世界でNo.1でいる里菜ちゃんとやらが優しいだけの女の子であるはずがないじゃない!!

 (お腹の子供の父親は賢児ではない気がする・・・。まぁ、別れた今の私にとってどうでもいい話だけど)

 つい直前まで繰り広げられていた二人との遣り取りを思い出してしまった咲夜が大きな溜め息を漏らす。

 ♪♪♪

 そんな咲夜の耳にスマホが鳴る音が入る。

 「もしもし?・・・何だ、お母さんか。元気?」

 咲夜のスマホに電話したのは母親である麗香だった。

 「元気よ。それよりも咲夜、実は大事な話があるの」

 母の話はこうだった。

 故郷に帰って【純喫茶フルムーン】を受け継いで欲しいと──・・・。

 「でも、私にはイラストレーターとしての仕事があるのよ?」

 「イラストレーターって在宅でも出来るのでしょ?今はそれで良くても、お母さんとしては未だに独身でいるあなたが心配なの」

 ご近所さんやビジネスマン達にとって憩いの場である純喫茶フルムーンを失くしたくないのよ

 それに何と言っても──・・・。

 「貴女は半分人間ではないし、今は術を使って誤魔化しているけど、何十年経っても十代後半にしか見えない自分と周囲の人間を比べた咲夜が決して埋める事が出来ない種族の違いを抱く事を危惧しているの」

 「お母さん・・・」

 麗香の言う通り、咲夜は人間ではない。

 咲夜は熾天使であるカールハインツこと望月 達哉と麗香との間に産まれた熾天使と人間の混血児なのだ。

 現代風に言えば咲夜は熾天使と人間のダブルという事になる。





 天使でありながら人間

 人間でありながら天使

 だが、天使としても人間としても中途半端な存在





 それが咲夜という女だった。

 今の咲夜は変化の術を使う事で周囲には年相応の黒髪黒目の日本人女性に見せているが、本来の姿は妖精や女神と称えられそうな外見をしているプラチナブロンド色の髪と青い瞳を持つ神秘的な美貌を持つ女性なのだ。

 「・・・・・・店を継ぐかどうかはおいといて、一度帰るね」

 麗香にそう答えた咲夜はスマホを切るのだった。













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