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11話
しおりを挟む精霊祭りの後で秋が終わり告げ、木枯らしが吹き、雪が全てを白く覆い隠す冬が訪れる。
その間、ヴィルヘルミナは炊事・洗濯・掃除・裁縫といった家事全般に女の子に必要な教養(花嫁修業の一環でもある)を母親から、父親からは弓矢を使った狩りを教わったりして過ごしていた。
冬の厳しい寒さが緩む頃
溶けた雪は川に流れ、大地からは芽が息吹き春の訪れを告げる。
麗らかで眠気に誘われる陽気に満ちた春のある日
ウォルフから獣人の里───つまり自分の生まれ故郷に来ないか?と誘われた。
「ウォルフお兄ちゃんの故郷に?何時なの?」
「来週だ。但し、ヴィルヘルミナのご両親には獣人の里ではなく森に狩りに行くと伝えて欲しいんだ」
ウォルフ曰く
獣人の里はヴィルヘルミナの祖母が住んでいる森の奥の更に奥───暗黒の森を通り抜けたら更に歩かなければいけない場所にあるのだと教える。
「あ、暗黒の森って一歩でも足を踏み入れたら二度と出る事が出来ない迷路のようになっているとか、そこで死んだ人間の未練が悪霊となって出るとか、人間を食べる大きな虎?あれ?大きな熊?大蛇だったかしら?が棲んでいるとか言われている危険な場所・・・よね?」
ヴィルヘルミナが恐る恐る暗黒の森について尋ねる。
「悪霊については暗黒の森が昼でも夜のように暗いからという人間の思い込みだが、獰猛な動物が棲んでいる事と迷路のようになっているのは事実だ」
あの婆さんも単身で暗黒の森に乗り込んだら間違いなく連中に食べられてしまうだろうな~
「い、行きたくない・・・」
素手で倒した熊を鍋にしてご馳走してくれるあの祖母が敵わない動物が棲む森を通り抜けるなんて出来っこないと、ヴィルヘルミナは必死になってウォルフの故郷に行く事を拒否する。
「俺が一緒だから大丈夫だよ」
「本当?ウォルフお兄ちゃんも一緒なの?」
「ああ」
そもそも一人で危険な場所に行かせないし、自分が同行してヴィルヘルミナを護るのは当然だとウォルフが未来の嫁の頭を撫でながら宥める。
「じゃあ・・・ウォルフお兄ちゃんの故郷に行く!」
お母さ~ん。来週、ウォルフお兄ちゃんと一緒に森まで狩りに行きたいの!
行ってもいいでしょ?
ヴィルヘルミナが声を弾ませながら一階のキッチンで料理を作っている母親の元へと駆けて行く。
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