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6話
しおりを挟むイケメンのお兄さんの言葉を借りればマッチョで逞しい婆さんは元気だった。
腹筋・腕立て伏せ・指立て伏せ百回、懸垂五十回は簡単に出来るレベルで健康優良児なのだ。
「お兄ちゃん、ありがとう。お兄ちゃんのおかげでおばあちゃんの元気な姿が見れたし、何よりお母さんに怒られずに済むわ」
「どういたしまして」
祖母の見舞いを終えたヴィルヘルミナはイケメンのお兄さんと一緒に森を歩いていた。
「お兄ちゃん。その、今日のお礼をしたいのだけど・・・」
父親以外の大人の男の人に何をプレゼントしたらいいのか分からないヴィルヘルミナは言葉に詰まる。
「お礼をしたいと言うのなら、俺と一緒に過ごしてくれないかな?」
祭りの時はパートナーとして一緒に行って欲しいとか、一緒に森を散歩したり川で遊んで欲しいとか、話し相手になって欲しいというイケメンのお兄さんの言葉にヴィルヘルミナは頷く。
「お兄ちゃん「ウォルフだ。俺と二人で居る時はウォルフって呼んで欲しい」
狼にとって自分の本当の名前を教えるという行為は身内以外の特別な相手───例えば愛情に近い好意か番にしたいと思う相手に対してするものだ。
ウォルフがヴィルヘルミナに本当の名前を教えたという事は、彼女に対して何かしら特別な想いを抱いているという事である。
「ウォルフ?お兄ちゃんはウォルフって言うのね?あたしはヴィルヘルミナ」
何時もお母さんが作ってくれた赤いビロードの頭巾を被っているから村の人達はあたしの事を『赤ずきん』や『赤ずきんちゃん』と呼んでいるわ
そういえば自分の名前を教えていなかった事に気が付いたヴィルヘルミナは、イケメンのお兄さんことウォルフに名前を教えた。
「お嬢さんの事はヴィルヘルミナって呼んでもいいかな?」
「うん!」
「それでは・・・家まで送るよ、ヴィルヘルミナ」
(お兄ちゃんに名前を呼んで貰うと何だか嬉しい・・・)
ウォルフに自分の名前を呼んで貰っただけなのに嬉しいという思いと、それとは別に言葉に出来ない思いがヴィルヘルミナの小さな胸を占める。
「ありがとう、お兄ちゃん「俺の事はウォルフと呼んで欲しいな」
あっ・・・
「ウォルフお兄ちゃん」
(ここはウォルフお兄ちゃんではなくウォルフって呼んで欲しかったのだが・・・)
子供にはハードルが高かったかと、ウォルフは苦笑を浮かべる。
手を繋いだ二人は赤ずきんの家へと向かうのだった。
※ゲームのおばあさんは朗らかでほわ~んとした雰囲気なのに対し、ゲームに似た世界という名の現実のおばあさんは一人で生きていけるくらいに筋骨隆々なゴリマッチョで怪力。レスラーや野生児的な感じです。
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