白蛇様の祟り

白雪の雫

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後編

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 儀式の騒動から次の日

 私は何時ものように学校に通いました。

 まだ夏休みではないから通学しないといけなかったので・・・。

 『おはよう、美夕ちゃん』

 『おはよう、早紀ちゃん』

 仲のいい女子達と顔を合わせるなり、私達は話し始めました。会話は昨日の儀式の事が中心だった事は言うまでもありません。

 新しい巫女は誰になるとか、一人娘に甘い田村さんの両親も今回の事は流石に庇い切れないかもとか話していたその時、誰かが教室に入ってきました。

 田村さんです。

 今日の田村さんは何時もと雰囲気と言えばいいのか、顔つきと言えばいいのか、とにかく違っていたのです。





 頬は痩せこけ、瞳は爛々と輝き、瞳孔は縦に長くなっている

 纏っている雰囲気は暗く陰気で不気味なもの





 今の田村さんの姿と雰囲気を正確に描けるのは、ホラー漫画の巨匠だけでしょう。

 何かあったのでしょうか?

 たった一晩で田村さんが変貌してしまったのです。

 田村さんが変わったのは外見と雰囲気だけではありません。

 牛肉や豚肉、鶏肉を生で出して欲しいと、火を通していない卵を出して欲しいと学食のおばさん達に頼むようになり『それは出来ない』と学食のおばさん達が断ると、田村さんは『シャーッ!』という声を上げて威嚇するのです。

 その時の田村さんの声は蛇そのものでした。

 もしかしたら今の田村さんは、自身を模ったご神体を蹴った事に対する白蛇様の怒りを向けられた結果なのでしょうか?

 一人娘である田村さんの奇行に不安を抱いた田村さんのご両親は病院に診察して貰ったそうですが、結果は異常なしだったらしく処方した薬を飲んだのですが、それでも田村さんの奇行と外見は治りませんでした。

 次に田村さんのご両親は若葉村の神主と住職にお祓いを頼んだのですが『自分では手の負えるものではない』と拒否されたそうです。

 『こんな田舎の住職や神主は当てにならん!』と言い捨てた後、田村さんのご両親は高名な霊媒師や霊能者に娘を元に戻して欲しいと頼んだのですが『お嬢さんに取り憑いたのは蛇の神様。何か恨まれるような事をしたのではないか?』『自分では無理』と、にべもなく断られたのだとか。

 そんなご両親の心配をよそに田村さんの見た目に変化が起こり、それと同時に奇行も目立つようになりました。





 窪んだ目に爛々と輝く瞳

 耳の辺りまで裂けた口に二つに分かれた舌先

 青みを帯びた肌に付いているのは鱗





 肉を生のまま口にしようとしたり、卵や生きたカエルを丸呑みにしようとする度に田村さんのご両親は必死になって田村さんを止めたのだそうです。

 一人娘の奇行と変わりゆく姿に我慢の限界が超えたのでしょう。

 田村さんのご両親は互いに親権を放棄して離婚したのだそうです。










◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆









 両親に見捨てられた田村さんがどうなったのか、事の顛末を人伝に聞いた私には分かりません。

 ですが頭部が人間、首から下が蛇という二~三十年くらい前にブームになった人面犬ならぬ人面蛇を見たと今朝のニュースで流れました。

 発見した人がスマホで撮影した映像に映っていた蛇の顔は・・・田村さんでした。

 田村さんはどうなってしまうのでしょうか?

 どこかの研究所によって色んな検査を受けてから何かしらの生体実験に使われるのでしょうか?





 今朝のニュースを見て田村さんを思い出したので、私の不思議体験を話した次第です。






※美夕視点では分かりませんが、離婚した両親は後に命を落とす・借金地獄・田村さんの親戚もホストに嵌まるや不倫するという風に田村さんがご神体を蹴飛ばしたせいで悲惨な末路を辿っています。








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