1 / 2
前編
しおりを挟む私、若村 美夕(19)が住んでいる若葉村は良質の水と温泉に恵まれています。
理由は水の神としてだけではなく子宝と金運の神、そして守り神として白蛇様を信仰しているからです。
私自身も子供の頃から休みの日には祖母と一緒に白蛇様を祀る水龍神社に行って手を合わせていました。
私が今から話すのは、長閑で平和という言葉が相応しい若葉村に今から二年前に起こった不思議な出来事です。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
『美夕、蛇は白蛇様の使いだから若葉村に恵みを齎してくれる。だから決して傷つけてはいけないよ』
殺すなんて以ての外だと、幼い頃から両親と祖父母に言われてきたからなのか、私は白蛇様を敬い同時に祟りを畏れていました。
(ちなみにこれは他の村の人達にも言える事だったりする)
あれは・・・私が中学二年の時の事でしょうか。
一人の女の子が若葉中学校に転入してきました。
彼女の名前は田村 薫さん。
詳しい事情は分からないのですが、田舎でスローライフを楽しみたいとか自然を満喫する暮らしをしたいとかという理由で若葉村を移住先に選んだみたいです。
そんな田村さんですが都会で暮らしていたからなのか、垢抜けた可愛い女の子でクラスの男子達からチヤホヤされていた半面、女子達からは嫌われていました。
掃除をサボるのは当たり前。
自分の宿題を取り巻きにさせるのは当たり前。
男子を使い走りにするのは当たり前。
自分より可愛い女子を取り巻きに虐めさせるのは当たり前。
犬や猫といった動物を切り刻むのは当たり前。
典型的ないじめっ子の田村さんが若葉村でこのように振る舞っていても何のお咎めもなかったのは、彼女の実家が金持ちだという事が大きな要因でした。
表面上は波風を立てず穏やかに必要最低限の言葉を交わしつつ、心の中では田村さんに対する憤りを抱く日々を起こる事三年
私が十七歳になった年の夏に事は起こりました。
若葉村では夏になると巫女に選ばれた、十三歳から十八歳の一人の少女がご神体である白蛇様の像に神酒を捧げ神楽を舞う儀式があるのですが、その巫女に田村さんが選ばれたのです。
この儀式は五穀豊穣と若葉村の繁栄と白蛇様の加護を得る為の神聖なものです。
儀式の要である巫女として、田村さんが選ばれたという事実に村の人達は神主に抗議しました。
ですが神主は『自分はただ白蛇様のお告げに従ったまで』と言って、神社に押しかけた村の人達の主張を突っぱねたのです。
神主さんは田村さんのお父様から賄賂を貰ったのでしょうか?
本当に白蛇様の神託に従ったのでしょうか?
どっちなのか私には分かりませんでしたが、何時爆発してもおかしくない爆弾を抱えたまま、儀式の日を迎えたのです。
村の人達が見ている前で白蛇様の像に神酒が入っている盃を捧げた後、巫女が神楽を舞う。
これが儀式の流れなのですが、あろう事か田村さんは白蛇様の像を足蹴りしたのです。
これには私を含む村の人達だけではなく神主さんも怒り狂いました。
ですが田村さんにとっては馬耳東風。
寧ろこう言って挑発したのです。
『村の守り神だか何だか知らないけど、白蛇様なんて居る訳ないじゃん!本当に居るのならあたしを祟ってみやがれ!!』
科学が発達している二十一世紀なのに、こんな像を崇めているあんた達の頭がちゃんちゃらおかしいわwww
と───。
『巫女さんの格好って綺麗だからやってみたいとパパに頼んだけど、こんな仕事引き受けるんじゃなかった~』
村の時化た祭りより繁華街で遊んだ方がよっぽど有意義だったわ
若葉村の伝統行事を罵った田村さんは神社から去って行きました。
村の人達は神聖な儀式を穢したと神主さんに詰め寄ったのですが『自分は白蛇様のお告げに従っただけ』という主張を決して曲げませんでした。
このままでは平行線で埒が明かないと思い神社から引き揚げようとしている私達に神主さんはこう告げました。
近いうちにあの一家とその親族は痛い目を見るだろう──・・・。
※儀式は後日改めてやりました。巫女さんは美夕ではなく別の女性というか本来選ばれていたはずの女の子です。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
コ・ワ・レ・ル
本多 真弥子
ホラー
平穏な日常。
ある日の放課後、『時友晃』は幼馴染の『琴村香織』と談笑していた。
その時、屋上から人が落ちて来て…。
それは平和な日常が壊れる序章だった。
全7話
表紙イラスト irise様 PIXIV:https://www.pixiv.net/users/22685757
Twitter:https://twitter.com/irise310
挿絵イラスト チガサキ ユウ様 X(Twitter) https://twitter.com/cgsk_3
pixiv: https://www.pixiv.net/users/17981561
#彼女を探して・・・
杉 孝子
ホラー
佳苗はある日、SNSで不気味なハッシュタグ『#彼女を探して』という投稿を偶然見かける。それは、特定の人物を探していると思われたが、少し不気味な雰囲気を醸し出していた。日が経つにつれて、そのタグの投稿が急増しSNS上では都市伝説の話も出始めていた。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
反転、異端、足音。
Dievoat
ホラー
ある青年は、心霊スポットと称されている廃病院を探索することにした。何が起きても記録できるようにカメラを持って。中はひどく寂れていたが、妙にあちらこちらに生活の痕跡はあった。病院内を探索する中、そこで撮影者が見たものとは?
狭間の島
千石杏香
ホラー
「きっと、千石さんに話すために取ってあったんですね。」
令和四年・五月――千石杏香は奇妙な話を聴いた。それは、ある社会問題に関わる知人の証言だった。今から二十年前――平成十五年――沖縄県の大学に彼女は通っていた。そこで出会った知人たちと共に、水没したという島の伝承を調べるために離島を訪れたのだ。そこで目にしたものは、異様で異常な出来事の連続だった。
光輪学院シリーズ・神無月の憂鬱
hosimure
ホラー
【光輪学院高等部・『オカルト研究部』】から、神無月を主人公にしたお話です。
部活動を無事に終えた神無月。
しかし<言霊>使いの彼女には、常に非日常が追いかけてくる。
それは家の中にいても同じで…。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる