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8話
しおりを挟むダンスを終えた王宮では絢爛豪華な衣装に身を包んだ貴族達が談笑しているからなのか、厳かでありながらどこか穏やかな空気に包まれている。
『マリーアントニア!世界を救う為に我等が異世界より召喚した聖女のサヤカを殺めようとは・・・っ!父上!私は父上の命令であるとはいえ、マリーアントニアのような嫉妬深い女を妃に迎える事など出来ません!!』
そんな空気をぶち壊すかのように、ミッシェルが清華を抱き締めながらマリーアントニアに向けて断言したのだ。
『恐れながら陛下!ローレライ王国の忠実な僕であるラジュエルからも申し上げます!事もあろうに、マリーアントニア様だけではなく私の婚約者であるビアンカが聖女であるサヤカに対して狼藉を働いたところを私は目撃してしまったのです!』
『ミッシェル殿下の忠実な臣であるゼルクからも申し上げます!私もビアンカ嬢と私の婚約者のアグネスが聖女であるサヤカに対して暴行を働いたところを目撃しました!』
『ミッシェル殿下に仕えし忠実な臣下たるイオからも申し上げます!テレジアは我が婚約者でありながら嫉妬という実に下らぬ理由で我が国の聖女にして世界にとって唯一の希望であるサヤカを弑逆しようと!!!』
今すぐ彼女との婚約を破棄、このまま国内に留めていたら再びサヤカに危害を加えるかも知れないからマリーアントニアを含む四人の令嬢を国外追放して欲しいとミッシェル達が父である国王に訴える。
『ふむ・・・』
(・・・・・・・・・・・・)
ミッシェル達の訴えを聞いた国王は思案する。
そして───
『聖女弑逆未遂の件は我が国にとって最大の汚点にして、斯様な人間が居るという事自体が侮辱である!』
国王がマリーアントニア、テレジア、アグネス、ビアンカの四人に国外追放を宣言しようとしたその時、マリーアントニアが口を挟む。
『恐れながら陛下。あたくし達は聖女様に対して狼藉を働いた事も弑逆しようとした事もございません。まずはこれをご覧下さい』
自信に満ちた力強い声でマリーアントニアが、四角い小さな板のような物体を取り出すと、そこには男と聖女が抱擁を交わしている姿が映り、何やら言葉を交わしている。
女は聖女である清華、男はミッシェル、イオ、ゼルク、ラジュエルだけではなく若くて美形の執事達だ。
清華が抱擁を交わしている場所は寝室、執務室、庭園、温室、森林等───相手によってそれぞれ異なる場所で逢引きし、あろう事か交合していたのだ。
『情熱的なゼルク♡』
『淡泊に見えて実は上手なラジュエル♡』
『色んな道具を使って楽しませてくれるイオ♡』
『絶倫なミッシェル♡』
『イケメンイケボな上にベッドでもヒロインを攻略するって流石は攻略対象者なだけあるわ~♡』
『用意した血糊が入っている袋を破っただけで、あたしを生娘だと思う男達を手玉に取って遊ぶのって楽しいわ~』
『ミッシェル、イオ、ゼルク、ラジュエルは攻略対象者だからあたしの逆ハーに加えるのは当然だけど何て言えばいいのかな~?何かこう・・・物足りないのよね~。ここは一つ大物なATMが欲しいわね~』
『じゃあイケボでイケオジな国王も誘惑しちゃおう~っと♡』
『王妃はおばさんだもん!』
『国王だっておばさんと化してしまった王妃ではなく若くて可愛い女の子を味わいたいよね~♡』
『この可愛い顔とパパ活で磨いたテクで国王を落としてみせるわ!!!』
清華の宣言通り、そこには国王が聖女と交わり、王妃との交わりでは味わえない異世界の少女がパパ活で培ったテクに落ちてしまっている中年男の姿があるだけだ。
マリーアントニアが手にしている四角の小さい板のようなものに映っていた動画はそこで終わっていた───。
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