魔王として討伐されるはずだった私は異世界人のアドバイスで幸せになります

白雪の雫

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6話

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 近い将来、魔王が出現して世界を未曽有の危機に陥れるという神託が下ったので、ローレライ王国は異世界というか日本から一人の少女を聖女として召喚する。

 少女の名前は清華さやか

 自分を召喚した人達から話を聞いた清華はローレライ王国を救う為、聖女としての訓練を受ける事になるのだが、そんな彼女にローレライ王国の常識や魔法などといった知識や使い方を教えるのが王太子のミッシェル、宰相子息のイオ、騎士団長子息のゼルク、教皇子息のラジュエルである。

 四人には当然と言うべきか婚約者が居るのだが、彼等は純粋無垢で天真爛漫な清華に心惹かれてしまい、聖女にドレスや宝石などを貢いだり───という風に教師としてだけではなく清華に恋する一人の男として接触する機会を得ようとするのだ。

 清華はというと聖女としてのステータスを上げて行きつつ、四人の中からいいな~と思った男性を選んで好感度を上げていくのだが、ヒロインの前に立ちはだかるのが悪役令嬢として位置づけられている攻略対象者達の婚約者達である。

 イオの婚約者であるテレジア、ゼルクの婚約者であるアグネス、ラジュエルの婚約者であるビアンカ、そしてミッシェルの婚約者であるマリーアントニアだ。

 彼女達は清華に対して陰湿な、そして殺人未遂紛いな虐めをする訳ではない。

 寧ろ婚約者達は正々堂々と聖女に剣術・魔法・体術・舞踊といった方面で勝負を挑むし、肌の露出が大きい服を着るのは止めた方がいいとか、婚約者が居る異性と密着するかのように接するのは止めた方がいいと注意するくらいである。

 ローレライ王国で親しい人間といえばミッシェル達だけで両親や友達と引き裂かれてしまって寂しい。

 その寂しさを彼等で埋めているのだと、清華が悪役令嬢として位置づけられている婚約者達に涙を浮かべながら訴えるのだが、聖女の涙を目の当たりにしてしまった攻略対象者達が『聖女を虐げた!』と非難するのだ。

 このイベントで攻略対象者達の婚約者に対する想いも情も完全に失ってしまい、代わりに聖女に対する好感度が大幅にアップする。

 そして聖女のHP・MP・ATC・DEF等といったステータスがある程度まで達すると王宮でイベントが始まる。

 第一章の始まりである舞踏会だ。

 この舞踏会は聖女の旅立ちと無事を祈る為のものなのだが、その時にミッシェルがマリーアントニアに対して婚約破棄を言い渡してしまうのだ。





「お袋、攻略対象者が婚約破棄を言い渡すのはマリーアントニアだけなのか?」

「違うわ。このイベントは聖女に対する好感度が一番高い攻略対象者が起こすものなの」

「攻略対象者から婚約破棄された悪役令嬢は婚約者が雇った刺客、ならず者、暗殺者──・・・そういう類の者達によって暴行、最終的に命を奪われる。そして、その無念が彼女達を魔王として蘇らせてしまう・・・と」

「ええ」

「美沙都。マリーアントニア殿は魔王ブラッディ・マリーと化し世界を未曾有の危機に陥れるが、メンタルが豆腐よりも柔い他の攻略対象者達の婚約者もそうなのか?」

「ええ」

 イオの婚約者だったテレジアは黒焔の殲滅姫、ゼルクの婚約者だったアグネスは不滅の戦姫、ラジュエルの婚約者だったビアンカはたま狩りの闇姫という二つ名を持つ魔王として蘇るのだと、魔王となった悪役令嬢達は聖女とパーティーメンバーである元婚約者達によって倒されるのだと、美沙都がマリーアントニアに教える。

「美沙都」

「お袋」

「「魔王の二つ名って物凄く中二病感溢れているな」」

「言っておくけど!魔王として蘇る彼女達の二つ名を考えたのは私じゃないからね!!!」

 私はプレイしていたゲームの設定を話しているだけだから!!!

 自分が考えた訳でもないのに、紫苑、美沙都、銀河の三人は共感性羞恥を覚えてしまったのか、思わず顔を真っ赤にしてしまう。

「そんな!あたくし達が世界を滅ぼす魔王になる!?聖女様達によって倒される!?」

 美沙都から自分の行く末を聞いたマリーアントニアは泣き叫ぶ。

「お袋。彼女達を救う方法はないのか?」

 マリーアントニアに胸を貸している銀河が美沙都に問い質す。

 う~ん・・・

「マリーアントニア殿、聞いてもいいかしら?ローレライ王国と貴女が置かれている状況はどうなの?」

「ミサト様?」

「教えてくれないかしら?」

 状況によってはマリーアントニアだけではなく、清華に骨抜きにされるかも知れない攻略対象者達の婚約者達も救えるかも知れないという美沙都の言葉にミッシェルの婚約者という美人は、神託が下ったので異世界から聖女を召喚する為の準備をしている最中なのだと語った。

「あなた、銀河。昔は仕事や相手で使い分けていたけど今は使わなくなったスマフォかガラケー、それかボイスレコーダーを持っていないかしら?」

 使わなくなったスマフォがあれば録画・録音が出来るので、マリーアントニアを含む婚約者達を救う事が出来るかも知れないと意見を口にする美沙都に、確かに使わなくなったスマフォと仕事の関係でボイスレコーダーを持っているが、それ等は異世界?ゲームの世界?で使えるかどうか分からない。

 仮に使えたとしても電池が切れたらどうやって充電するのか?

 今回はたまたまゲーム世界の住人が朝霧家に来たから良かったものの、普通であれば何やら変な事を主張しているコスプレイヤーとして警察のお世話になっていたはず。

 紫苑と銀河の意見に美沙都の顔が曇る。

「あの!シオン様!ミサト様!ギンガ様!その、あたくしにスマフォとやらの使い方を教えて下さらぬか!?」





 絶対に魔王にならない!

 自分が生き延びる為に冤罪を証明して見せる!





 マリーアントニアから強い意志を感じ取った紫苑達はスマフォの使い方を教える。





「シオン様、ミサト様、ギンガ様。スマフォとやらの使い方を教えて下さってありがとう・・・」

 感謝の念を告げようとした途端、三人の目の前でマリーアントニアの身体が光の粒子となって消えてしまった。

「親父?お袋?・・・何でマリーアントニアは・・・?」

「これは推測でしかないのだが、恐らく問題解決の糸口を掴めたからではないのかと思う」

 録画は証拠になるからな

「彼女・・・魔王にならずに済むといいな」

「そうね・・・」

 紫苑の言葉に美沙都と銀河は、マリーアントニアの無事を桔梗神社に神として祀られている鬼とその妻に祈る───。








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