魂の花

白雪の雫

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王妃になった男爵令嬢-5-

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 貴族の娘なのに平民として母子家庭で育った自分は貧乏だった

 貴族の娘になったのだから贅沢をしたい

 男爵令嬢だという理由だけで自分を馬鹿にする学園の生徒達を跪かせたい

 その為にはまず自分がキャンサー王国の王太子妃になる必要がある

 未来の自分が王妃になるにはヴィンフリーデを婚約者の座から引きずり落とさなければならない

 でもどうすればいいのか分からないから悩んでいる





 「あたしの悩みは話したわ!ハンターさん、貴方ならこの問題を解決出来るのよね?!」

 ハンター手ずからが淹れた紅茶を飲み終えたスピカは、自分の目の前で優雅に腰を下ろしながら紅茶を口にしている美貌の男に詰め寄る。

 「人間という存在は実に面白い。スピカさん、貴女にはこのアイテムがいいでしょうね」

 そう言ったハンターがスピカに見せたのは凝ったデザインの小瓶だった。

 「これは・・・?」

 「人間の世界には魂を入れ替える術と魅了する術というのがあるのですよね?」

 この薬はそれ等を応用したもので、自分の魂を別の人間の身体に入れ替えるのではなくその人間が今まで身に付けてきた教養や礼儀作法等といったスキルを交換する薬なのだと、同時に人々を魅了する効果もあるのだと、小瓶を不思議そうに見つめているスピカにハンターが教える。

 「でも、こういう薬って効果は一時的なものでしかないのでしょ?値段の割に全く効かないとか。或いは術者が死んだら効果が切れるのがお約束だったりするのよね~」

 一度そのような類のアイテムを試した事があるスピカが胡散臭そうな表情を浮かべる。

 「それは術者が、薬を作った者が人間であるが故に効果が継続しないのです。私が作る薬の効果は薬を口にした者の命が尽きる時・・・つまりスピカさんが死ぬまで続きますからその辺りは大丈夫ですよ」

 「ハンターさんが作った薬・・・それってもの凄く高価くない?」

 そんな夢のような薬を買うとすれば金貨ではなく白金貨何百枚、いや何千枚は出さないといけないではないだろうか?

 「お金は要りません。薬の代金はスピカさんの魂です」

 薬を飲む時は、スキルを入れ替えたい人物の顔を思い浮かべなければ効果は出ませんよ

 「わ、分かったわ!あたしが死んだらあたしの魂をハンターさんにあげる。だから・・・薬を頂戴!!」

 「これで契約成立ですね」

 ハンターから薬を受け取ったスピカは館を出ると、王立学園の寮へと帰るのだった。











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