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王妃になった男爵令嬢-3-
しおりを挟む(あたしは王太子妃になる為に王立学園に入学したのよ!?)
それなのに何でアーデルベルト様の傍には、何時もあの女が当然のように居る訳!?
あたしのような美少女に言い寄られて喜ばないアーデルベルト様の方が変なのよ!!
昼休みの食堂でポツンとサンドイッチを食べているスピカは、自分の目の前のテーブルで楽しそうに昼食を摂っている王太子殿下ことアーデルベルト、彼の婚約者こと公爵令嬢であるヴィンフリーデに苛立ちと嫉妬を含んだ視線を送る。
「アーデルベルト様とヴィンフリーデ様・・・本当にお似合いのお二人ですわ」
美男美女のカップルという言葉は二人の為にあるのだと、アーデルベルトとヴィンフリーデの近くで昼食を摂っている生徒達がうっとりとした表情を浮かべながら称賛の声を上げる。
そんな空気に耐え切れなくなってしまったのか、スピカは苛立ちを隠す事なく食堂を出て行くのだった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
(ヴィンフリーデって公爵家に産まれただけでアーデルベルト様の婚約者になったのよね!!)
顔だってあたしの方が上なのに!
貴族令嬢としてもあたしの方が完璧なのに!
親が決めた結婚相手に縛られているアーデルベルト様が気の毒過ぎるわ!!
スピカは心の中でヴィンフリーデに対して毒吐くが、そう思っているのは彼女だけだ。
実際に顔のみならず貴族令嬢としての立ち居振る舞いに教養、そして心の在り方───全てにおいてヴィンフリーデの方が上であり、アーデルベルトもそんな彼女を心から愛している。
午後からの授業を受ける気が失せてしまったスピカは王立学園を抜け出して王都のメインストリートを歩きながら、どうすればヴィンフリーデを陥れる事が出来るのだろうかと考えるのだが、その考えが全く思い浮かばないものだから更に苛立っていた。
「・・・・・・どうすればいいのかな~?ってお腹空いた」
どんなに苛立っていても空腹になるらしい。
ふと空を見上げれば、闇色に覆われている空には淡い光を帯びた満月が君臨していた。
お腹が空いている事もあるが今の自分は王立学園の生徒だ。寮に戻らなければ寮長に怒られるし、何と言っても今回は授業もサボってしまったのだ。
「あれ?」
(こんな場所にこんなお屋敷があったっけ?)
我が身に降りかかる不幸を想像して思わず鬱になってしまったスピカの前に出現したのは白亜の荘厳な館だった。
今は春であるはずなのに、庭園には春だけではなく夏、秋、そして冬の花が自分の美しさを競うかのように色鮮やかに咲き誇っているのだ。
(・・・・・・・・・・・・こんなに大きなお屋敷に住んでいる人って公爵様とか、王弟殿下とかだったりするのかな?)
屋敷の住人に興味を持ったスピカは足を踏み入れるのだった。
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