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⑩告白された・・・ので逃げる-3-
しおりを挟む待ち合わせ時間は夕方で、待ち合わせ場所はアームズの町の象徴とでも言うべきホリーの塔の前。
スマホを取り出した奈緒美がプロフィールに書いている【種】の中にあるカテゴリーを見てフォーマルドレス・靴・アクセサリーをタップすると、出現したそれ等の種を植えて魔力とコップ一杯分の水を与える。
(このデザインの服だったら奇抜すぎるとかで人目を引かないよね?)
奈緒美が栽培したのは、結婚式やパーティーの二次会に着ていけそうなマーメイドラインのロングワンピースだった。
パールディア王国の高位貴族の女性達を見た事がないので何とも言えないが、リボンとレースをふんだんに使った華美なロココ調っぽいドレスかクリノリンというイメージが奈緒美にはあった。
一般庶民である自分がそんなドレスを纏うのは駄目だろうと思ったのもあるが、一番の大きな理由はああいう類の服は似合わないという事を自分自身で分かっているからだ。
「これだったら・・・ディーフリードさんに恥をかかせないよね?」
地味ではなく、派手過ぎるでもなく、だがエレガントな女性らしさを演出する落ち着いた色合いのマーメイドラインのロングワンピース。
鏡に映っている自分の姿を前にしている今の奈緒美は、ディーフリードとの食事が楽しみだと言わんばかりの笑みが浮かんでいた。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
待つという行為は退屈でしかないと思っていた。
だが不思議な事に今は待つという行為が楽しいと思う。
中世ヨーロッパのような街並みがそう思わせているのかも知れないし、エステティシャンだった時の経験を生かしてハンドマッサージ店を開いて働くのは午前中のみで、しかも種で栽培した洗濯用洗剤で安定した収入を得ているからそう思えるのかも知れない。
(種から実った商品を売って高収入を得る。これが本当の濡れ手で粟って奴よね~)
と、実につまらない事を考えている奈緒美の元に一人の男がやって来た。
ディーフリードである。
(か、カッコいい~・・・)
元カレよりも長身で筋骨隆々。しかもイケメン。
ゲームのコスプレのような恰好も元カレだったら衣装に着られているという感じなのだが、ディーフリードだとファッションモデルのようにきちんと着こなしているのだ。
「ナオミ殿」
自分から誘っておきながら待たせて申し訳ないと謝罪するディーフリードに、そんなに待っていないからし社会人であれば待ち合わせ時間より早めに来るのが当然だと奈緒美が告げる。
「ディーフリードさん・・・実は私、市場と商業ギルドくらいしか行き来しないのでアームズの町について良く知らないのです。今から食事に行くにしても早い時間ですから、その・・・ご迷惑でなければ町を案内して欲しいのですが」
これは奈緒美にとって精一杯のデートのお誘いなのだ。
「喜んで!」
嬉しそうな声を上げたディーフリードは奈緒美の手を取ると歩き出すのだった。
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