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③飯テロをしますかね~?-4-
しおりを挟む次の日の夜
適当な大きさに切った大根・人参・白菜・春菊・きのこ・豆腐、そして一晩酒に浸けて臭みを消してから薄くスライスしたマウンテンボアの肉を、今回は袋に入っている顆粒出汁で出汁を作った鍋に赤味噌と白味噌を合わせた合わせ味噌を入れて煮込む。
「ぐつぐつと肉と野菜を濃い茶色と白いペーストで煮込む音、温かい湯気、食欲をそそるペーストの匂い・・・」
「出来ましたよ」
ぼたん鍋を早く食べたいと言わんばかりに待っている四人に奈緒美が器に肉と野菜、そして豆腐を盛り付ける。
ちなみにマウンテンボアの肉を浸ける時に使った酒、野菜と豆腐、顆粒出汁に赤味噌と白味噌は、バーナード達が眠っている間に奈緒美が自分のスキル種で実らせたものである。
「マウンテンボアの肉が臭くない!?」
「白と濃い茶色のペーストを合わせて作ったスープが野菜に染み込んで・・・美味い!」
「この白くて柔らかい奴はスープと一緒に食べると美味いな」
「野菜と肉の旨味、そして脂の甘味が溶け込んでいる事でスープに深みを感じるのね」
食事前の祈りを捧げた後、奈緒美が作ったぼたん鍋を食べたバーナード達の顔に笑みが浮かぶ。
「そういえばナオミさんが作った料理を食べたら何て言えばいいのかな~?身体が軽いっていうの?そういう感じがするんだよね~」
「シンディーの言う通り、ナオミさんの料理を食べた次の日は目覚めがすっきりして疲れが取れたって感じるんだよな~」
ぼたん鍋のお代わりを繰り返す事数回、腹が満たされ身体が温まった事で落ち着いたブルーノが思い出したように呟く。
「ナオミさんって疲労回復の魔法を使えるのか?」
「私が住んでいた島では、魔法という言葉はあっても実際に使える人間なんて誰一人として居ませんでしたよ」
「でもナオミさんからは私とは比べ物にならない膨大な魔力を感じるのよ」
これは魔法使いであるアデライトだからこそ感じ取る事が出来るものだ。
奈緒美が育った島は、魔法という言葉は知っていても使える人間はいなかったと言っていた。
という事は、ちゃんとした師匠の元で修行したら奈緒美は一流の魔法使いになれる可能性があるのだ。
アデライトは魔法の基礎を奈緒美に教える事にした。
「ナオミさん、目を閉じたら深呼吸を何度か繰り返すの。その時に身体の中に血液以外の何かが流れるのを感じたら・・・それが魔力よ」
アデライトの言葉に従って奈緒美が目を閉じて深呼吸を繰り返していると、種を実らせる為に注いだ魔力が自分の身体に流れているのを感じ取った。
「あっ・・・」
「ナオミさん、分かる?それが魔力なの!後はそうね・・・例えば自分の掌から火の球とか水の球とか氷の球が出てくるところとか・・・何でもいいから自分が魔法を使っているところを想像してみて」
そう言ったアデライトが見本として自分の掌から火の球や水の球を出して見せた。
奈緒美は漫画やゲームを参考に自分の掌から火の球や水の球とかが出てくるところをイメージするのだが───出現しなかった。
「何で火の球とか水の球とかが出ないのかな~?」
アデライトが不思議そうに首を傾げるが、奈緒美は漫画やゲームのように魔法で具現化した球が出現しない理由は何となくだが分かっていた。
自分のスキルが【手】と【種】だからだ。
【手】は美容の効果を齎し、【種】は金儲けと暮らしに役立つ物を実らせる。
その二つに割り振られた為に、あの女子高生達のように攻撃魔法や防御魔法といったものが一切使えないのだろう。
(柔道と剣道と空手をやっていたからとも考えられるわね)
「アデライトさん、魔法について教えて下さりありがとうございます」
魔法が使えなくても問題がないから大丈夫だと言った奈緒美は、気分を変える意味で食後のデザートとしてケーキを出すのだった。
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