2 / 7
2話
しおりを挟む『私とヘレナーは真実の愛で結ばれている!』
実は陛下には私の祖父───つまり先王が決めた由緒正しい将軍家の婚約者が居たのだけど、事もあろうに若かりし頃の陛下は彼女を捨てて平民の娘を王妃に据えてしまったの!
お父様の話によると、平民の娘ことヘレナーが王妃になるというシンデレラストーリーに民達は熱狂したけど、王妃になった当人はというと、王妃になれば左うちわで贅沢三昧な日々を送れると思っていたのに
『王妃様の役目は世継ぎを産む事です』
『食事のマナーがなっていません!』
『会談する相手の国の言葉を話せぬとは・・・こんなのが王妃とは情けない!!!』
『ヘレナー様、王妃が無知という事は陛下の侮辱に、国の恥に繋がるのです!!!』
寝ても覚めても重臣や教育係から小言を食らうなんて夢にも思っていなかったみたい。
遂に耐え切れなくなったヘレナーは陛下の目を盗んでイケメンの庭師と逢瀬を重ねるようになったの。
結果、産まれたのがジュリアーノって訳。
コンフィテュール王家の者だけが持つ紫色の瞳だけではなく父親の特徴を何一つ受け継いでいない赤子を陛下は、愛しいヘレナーが産んだ、初めて我が子と呼べる存在とでも言うべきジュリアーノを可愛がり次期国王と指名したわ。
だが同時に陛下はある事に気付いたの。
ヘレナーは平民の娘。
平民が後見人になれる筈がない。
そこで白羽の矢が立ったのが私ことベルフィーネ。
ベルフィーネの父親は王弟、母親はシルキー王国の王女。
平民の娘を母に持つ王子の後ろ盾としてはこれ以上ない有力な存在よね?
陛下は父と母に土下座をしてまで私をジュリアーノの婚約者に据えた訳。
ゲームのベルフィーネは幼い頃から従兄のジュリアーノに憧れていたから喜んで嫁いだのだけど、そこで待っていたのは───ユーリアが正妃だと言わんばかりに従兄の後宮に君臨している姿。そして王太子妃としての公務だけ。
ジュリアーノによって後宮の片隅に追いやられたベルフィーネは毎晩夫が弟の部屋を訪れ「アッー!」する事に涙する日々を送るしかなかったの。
両親を心配させたくないという思いだけでベルフィーネは耐えていたのだけど、遂に彼女の堪忍袋の緒が切れる事件が起こってしまうの。
ユーリアの侍女の一人がベルフィーネの侍女を馬鹿にした。
ベルフィーネは悪役に位置付けられているけど、実は侍女の顔と名前を覚えているし、結婚する前は年頃の娘として恋バナだってするし、仲人になって侍女達の結婚の世話もしている。
侍女の一人が体調を崩したら見舞ったり、『親が病気で見舞いに行きたい』と頭を下げて頼んだら有休を取らせるという風にちゃんとフォローするという気遣いの出来る姫なのよ。
ベルフィーネはユーリアの部屋を訪れて
『私の侍女がユーリアの侍女に馬鹿にされた。だから私の侍女に謝って欲しい』
と要求したの。
それを・・・どこをどう解釈したらそうなるのか
『女!貴様は我が愛しのユーリアの命を狙ったな!!!貴様のような恐ろしい女は今すぐ車裂きの刑にしてやる!!!』
憤怒の顔でジュリアーノは兵士達に命じてベルフィーネを後宮から引き摺り出すと、競技場で正妃だった女をちょっとしたショー感覚で車裂きの刑で命を絶たせたの。
ベルフィーネって王弟殿下の姫だけど、戦で働き手を失った女性が、乳飲み子や幼子を抱えている女性が、戦で傷ついた事で手が自由に動かなくなってしまった元兵士達が社会に復帰して働けるように職業訓練校、病院や銭湯を建設したり、時には被災地に赴いて自ら炊き出しをしたり、復興に手を貸したり、相手を傷つけないように言葉をかけたりと、本当の意味で国の事を考えて行動していた彼女の死に民達だけではなく、ジュリアーノの命令で王太子妃を引き摺り出した兵士達さえも歓声ではなく涙を流していたわ。
ベルフィーネの死後、ユーリアが後宮を抜け出して城下町を散歩していた時に出会った男───ミルキー王国の王子であるシェムザに、シェムザもまた女神のように美しい容姿と純粋無垢な心を持つユーリアに一目惚れしてしまうの。
城下町で出会った青年の事が忘れられなくなってしまったユーリアは立場を捨てる覚悟でシェムザと共にミルキー王国に駆け落ちして穏やかな日々を送るのだけど、自分の愛する男を奪われた怒りでジュリアーノは戦を仕掛ける事になる。
これが後の世にコンフィテュール・ミルキー戦争と語られる事になるのだけど、実はこの戦の勝敗はユーリアの好感度で決定づけるの。
ユーリアの中でジュリアーノの好感度が高かったらコンフィテュール王国が、シェムザの好感度が高かったらミルキー王国が勝つという風にね。
ジュリアーノルートのエンディングで
『ユーリアに認められたい一心で国を豊かにしたジュリアーノは後に名君と謳われるようになる』
というナレーションが流れるのだけど、主人公に無礼を詫びて欲しいと注意しただけで奥さんを処刑した男のどこをどうすれば名君なのだろうか?
まぁ、民は自分達の暮らしを良くしてくれさえしたら君主のプライベートなんてどうでもいいからね~。
でもね、救いもあるのよ。
『だが、亡き王太子妃ベルフィーネを慕っていた者達はジュリアーノの墓標に刻む』
コンフィテュールとミルキーの民を弄びし傲慢で卑しき平民王・ジュリアーノ
ここに眠る
公明正大なる冥界の神よ
我等善良なるコンフィテュールの民は願う
男色に耽り、淫婦ヘレナーの血を引く王国の簒奪者たる傲慢で卑しき平民王・ジュリアーノの魂に神の裁きを
傲慢で卑しき平民王・ジュリアーノを無間地獄に留め、終わる事のない神罰が下る事を
これでゲームのベルフィーネも少しは浮かばれた・・・かな?
139
お気に入りに追加
121
あなたにおすすめの小説

妹を見捨てた私 ~魅了の力を持っていた可愛い妹は愛されていたのでしょうか?~
紗綺
ファンタジー
何故妹ばかり愛されるの?
その答えは私の10歳の誕生日に判明した。
誕生日パーティで私の婚約者候補の一人が妹に魅了されてしまったことでわかった妹の能力。
『魅了の力』
無自覚のその力で周囲の人間を魅了していた。
お父様お母様が妹を溺愛していたのも魅了の力に一因があったと。
魅了の力を制御できない妹は魔法省の管理下に置かれることが決まり、私は祖母の実家に引き取られることになった。
新しい家族はとても優しく、私は妹と比べられることのない穏やかな日々を得ていた。
―――妹のことを忘れて。
私が嫁いだ頃、妹の噂が流れてきた。
魅了の力を制御できるようになり、制限つきだが自由を得た。
しかし実家は没落し、頼る者もなく娼婦になったと。
なぜこれまであの子へ連絡ひとつしなかったのかと、後悔と罪悪感が私を襲う。
それでもこの安寧を捨てられない私はただ祈るしかできない。
どうかあの子が救われますようにと。

他国から来た王妃ですが、冷遇? 私にとっては厚遇すぎます!
七辻ゆゆ
ファンタジー
人質同然でやってきたというのに、出されるご飯は母国より美味しいし、嫌味な上司もいないから掃除洗濯毎日楽しいのですが!?

【完結】義妹とやらが現れましたが認めません。〜断罪劇の次世代たち〜
福田 杜季
ファンタジー
侯爵令嬢のセシリアのもとに、ある日突然、義妹だという少女が現れた。
彼女はメリル。父親の友人であった彼女の父が不幸に見舞われ、親族に虐げられていたところを父が引き取ったらしい。
だがこの女、セシリアの父に欲しいものを買わせまくったり、人の婚約者に媚を打ったり、夜会で非常識な言動をくり返して顰蹙を買ったりと、どうしようもない。
「お義姉さま!」 . .
「姉などと呼ばないでください、メリルさん」
しかし、今はまだ辛抱のとき。
セシリアは来たるべき時へ向け、画策する。
──これは、20年前の断罪劇の続き。
喜劇がくり返されたとき、いま一度鉄槌は振り下ろされるのだ。
※ご指摘を受けて題名を変更しました。作者の見通しが甘くてご迷惑をおかけいたします。
旧題『義妹ができましたが大嫌いです。〜断罪劇の次世代たち〜』
※初投稿です。話に粗やご都合主義的な部分があるかもしれません。生あたたかい目で見守ってください。
※本編完結済みで、毎日1話ずつ投稿していきます。
いつだって二番目。こんな自分とさよならします!
椿蛍
恋愛
小説『二番目の姫』の中に転生した私。
ヒロインは第二王女として生まれ、いつも脇役の二番目にされてしまう運命にある。
ヒロインは婚約者から嫌われ、両親からは差別され、周囲も冷たい。
嫉妬したヒロインは暴走し、ラストは『お姉様……。私を救ってくれてありがとう』ガクッ……で終わるお話だ。
そんなヒロインはちょっとね……って、私が転生したのは二番目の姫!?
小説どおり、私はいつも『二番目』扱い。
いつも第一王女の姉が優先される日々。
そして、待ち受ける死。
――この運命、私は変えられるの?
※表紙イラストは作成者様からお借りしてます。

記憶を失くして転生しました…転生先は悪役令嬢?
ねこママ
恋愛
「いいかげんにしないかっ!」
バシッ!!
わたくしは咄嗟に、フリード様の腕に抱き付くメリンダ様を引き離さなければと手を伸ばしてしまい…頬を叩かれてバランスを崩し倒れこみ、壁に頭を強く打ち付け意識を失いました。
目が覚めると知らない部屋、豪華な寝台に…近付いてくるのはメイド? 何故髪が緑なの?
最後の記憶は私に向かって来る車のライト…交通事故?
ここは何処? 家族? 友人? 誰も思い出せない……
前世を思い出したセレンディアだが、事故の衝撃で記憶を失くしていた……
前世の自分を含む人物の記憶だけが消えているようです。
転生した先の記憶すら全く無く、頭に浮かぶものと違い過ぎる世界観に戸惑っていると……?

【完結】陛下、花園のために私と離縁なさるのですね?
紺
ファンタジー
ルスダン王国の王、ギルバートは今日も執務を妻である王妃に押し付け後宮へと足繁く通う。ご自慢の後宮には3人の側室がいてギルバートは美しくて愛らしい彼女たちにのめり込んでいった。
世継ぎとなる子供たちも生まれ、あとは彼女たちと後宮でのんびり過ごそう。だがある日うるさい妻は後宮を取り壊すと言い出した。ならばいっそ、お前がいなくなれば……。
ざまぁ必須、微ファンタジーです。

婚約者が他の女性に興味がある様なので旅に出たら彼が豹変しました
Karamimi
恋愛
9歳の時お互いの両親が仲良しという理由から、幼馴染で同じ年の侯爵令息、オスカーと婚約した伯爵令嬢のアメリア。容姿端麗、強くて優しいオスカーが大好きなアメリアは、この婚約を心から喜んだ。
順風満帆に見えた2人だったが、婚約から5年後、貴族学院に入学してから状況は少しずつ変化する。元々容姿端麗、騎士団でも一目置かれ勉学にも優れたオスカーを他の令嬢たちが放っておく訳もなく、毎日たくさんの令嬢に囲まれるオスカー。
特に最近は、侯爵令嬢のミアと一緒に居る事も多くなった。自分より身分が高く美しいミアと幸せそうに微笑むオスカーの姿を見たアメリアは、ある決意をする。
そんなアメリアに対し、オスカーは…
とても残念なヒーローと、行動派だが周りに流されやすいヒロインのお話です。

誤解なんですが。~とある婚約破棄の場で~
舘野寧依
恋愛
「王太子デニス・ハイランダーは、罪人メリッサ・モスカートとの婚約を破棄し、新たにキャロルと婚約する!」
わたくしはメリッサ、ここマーベリン王国の未来の王妃と目されている者です。
ところが、この国の貴族どころか、各国のお偉方が招待された立太式にて、馬鹿四人と見たこともない少女がとんでもないことをやらかしてくれました。
驚きすぎて声も出ないか? はい、本当にびっくりしました。あなた達が馬鹿すぎて。
※話自体は三人称で進みます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる