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12話
しおりを挟む「今までのやり方では近衛騎士団長の美しさと、快楽に悶えているところが表現出来ないわ・・・」
でも新作や続編の発表があるから取り掛からないといけないのも確かだ。
「いや!」
挿絵を描き直したいという思いに駆られたセレスティはスケッチブックに、自分がイメージしている近衛騎士団長の立ち絵と彼が兵士達に嬲られて快楽に悶えている姿を描いていく。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
ローズウッド公爵家との約束を破ったという事で、王位はフランツの王太子であったフリッツではなく弟であるグランツに譲位となった。
これであの男と顔を合わせずに済むと言わんばかりに、ギルベルトから話を聞いたアリーゼはお茶会で寛いだ表情を見せている。
修道院に入り世俗と縁を切った事になっているとはいえ家族の縁までが切れている訳ではない。
季節の節目になるとアリーゼは家族と顔を合わせて世間の流行だけではなく王家の情報も仕入れているのだ。
これはアリーゼだけではなく他のシスターにも言える事だったりする。
今日のお茶会ならぬ男同士の恋愛物語を発表する集会は楽しみだと思いながら生クリームを挟んだクッキーを口に運んだアリーゼは新人シスターが書いた男同士の恋愛物語に目を通す。
(これは・・・純愛ものですね)
美貌の伯爵が貴族令嬢と結婚するという事を耳にした、一見冷静そうな印象が強い美形執事。
伯爵と自分は主従関係だから想いを抑えていたが、想い人が奥方となる令嬢を抱くという事実に耐え切れなくなった執事は伯爵を襲ってしまう。
「本当は伯爵も執事の事が好きだったのね」
「冷静だけど本当は誰よりも情熱的な執事、執事の全てを受け入れる伯爵・・・」
はぁ~♡
尊いですわ~♡♡
執事が伯爵と結ばれてハッピーエンドな物語にシスター達は感動の涙を流す。
「シスター・セレスティ、貴女の新作は確か【筋骨隆々の皇帝が衆人環視の前で美形王子をメス堕ちさせる】というものでしたわね」
マザー・マリーアにマザー・アリーゼのみならず先輩シスター達が、期待に満ちた視線をセレスティに向ける。
「それが・・・実は何も書いていないのです!」
あぁ?
セレスティの言葉に、それまで和気藹々だった集会の場の雰囲気が殺伐としたものに、期待に満ちた視線が殺気の籠った視線へと変わる。
「シスター・セレスティ・・・?新作が出来ていないのであればそれは別に構わないのですが、せめてどのような手を使ってメス堕ちさせようとしたのかを教えて頂けませんこと?」
「新作については何も手を付けておりません。実は・・・過去に自分が書いた男同士の恋愛物語の挿絵に不満があったので描き直していたのです!!」
(こ、恐い・・・)
怒りで頬を引き攣らせている先輩シスター達を前に怯えてしまったセレスティは、まだ挿絵は完成していないと前置きした上で自分が手にしているスケッチブックを開く。
「こ、これは・・・っ!」
セレスティが描いた絵を見た先輩シスター達が声を上げる。
「この大剣を背負っている金髪の青年は【カイン王子の冒険譚】の主人公であるカインで、彼の隣にいる栗色の髪の少女はカインが助けるローラ姫である事が一目で分かりますわ」
「これはカイン王子が悪いドラゴンを倒した時の洞窟で、この建物はカイン王子が旅の途中で立ち寄る宿屋ですわね」
「物語ではカイン王子は美丈夫でローラ姫は花のように美しい少女だと書かれていますが、私達が目にする童話のカイン王子はどこからどう見ても醜男で、ローラ姫も醜女としか思えませんでした」
「シスター・セレスティが描いた絵であれば二人の美しさが容易に想像出来ますわ」
調度品に家具、食器にテーブルといった小道具、建物に道、動植物、果物に野菜、男性と女性の肉体───全てが写実的に描かれているので、この絵を冊子に使えばその場面がより想像しやすくなると、マザー達は夢中になってセレスティのスケッチブックに目を通していた。
「成る程。近衛騎士団長様はこのような感じの美丈夫だったのですね・・・」
兵士達に胸の突起だけを延々と責められるのは近衛騎士団長様にとって屈辱であるはずなのに、快楽に悶え狂っている姿は何と美しいのでしょう♡♡♡
先輩シスター達が歓喜の声を上げる。
「シスター・セレスティ。お願いがありますの」
「はい。何でしょうか?」
先輩シスター達のお願いは、自分達が書いた男同士の恋愛物語の挿絵を描いて欲しいというものだった。
「分かりました」
次の発表会で先輩シスター達が、セレスティの挿絵に黄色い声を上げたのは言うまでもない。
※セレスティは1970~1980年代チックな少女漫画、某漫画の神様が原作の某漫画のOVA版、某世紀末救世主を思わせる劇画風、某ホラー漫画家な画風、〇ーレクインチックな少女漫画的なイラストを描く事が出来ます。
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