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5話
しおりを挟む「先輩達のような男同士の恋愛物語を書いてみたい・・・。でも、何を書けばいいのか分からないわ」
食べられるモンスターの狩りをする為に森まで赴いたセレスティは次のお茶会で発表する男同士の恋愛物語について思いっきり悩んでいた。
「一人で城を抜け出して山賊とかに襲われている王子様を助けた騎士団長と結ばれるとかがいいのかしら?・・・あっ。ジャイアントホワイトラビットだ」
ジャイアントホワイトラビットというモンスターは繁殖力が高く肉は鶏肉に似て淡泊で食べ易い。肉だけではなく毛皮も防寒用としてお手頃価格で手に入るので平民に人気があったりする。
攻撃魔法は使えないが武器を扱う事は出来るので問題ない。
鉄扇を振りかざし一撃でジャイアントホワイトラビットを仕留めたセレスティは、慣れた手つきで血抜きをしてからジャイアントホワイトラビットを肉と毛皮に解体していく。
「後はこれを市場で売って・・・」
(!!)
解体したジャイアントホワイトラビットを抱えて市場へ向かおうとしたその時、森の奥から何かがこちらへと向かってくる足音が耳に入って来たのでセレスティが鉄扇を手に臨戦態勢に入る。
「オ、オーク・・・」
森の奥から出現したモンスターは高級食材にして睾丸が精力剤の材料の一つとして使われるオークだった。
オーク一体だけだったら倒す事が出来るが、集団で出てきたら一人で倒すのが難しい。
ここは撤退した方がいいと判断したセレスティが背を向けたその時、オークの断末魔が森に響き渡る。
(えっ?)
振り向いたセレスティの瞳に飛び込んで来たのは、噴水のように血を噴き出しているオークと、首を刎ねた事で返り血を浴びて血塗れになっている銀髪紫眼の人間離れした美貌を持つ青年だった。
「リュミエール・・・」
(えっ?もしかして私を知り合いと勘違いしたのかしら?)
「助けて下さいましてありがとうございます」
彼が口にしたリュミエールが誰なのか分からないが、セレスティは青年に頭を下げる。
「いや。これくらい倒した内に入らぬし礼を言われるような行為でもない」
(陛下と比べるのはこの人に対して失礼だけど、陛下にはない気高さと気品、何より王族を思わせる威厳があるのよね。もしかして他国の王族なのかしら?)
「あの・・・!オークの肉は高級食材ですので市場で売ればお金になります。オークの肉を売った代金を今回の礼として受け取って下さい!」
公爵家で過ごしていたら両親が謝礼を用意してくれただろうが、シスターであるセレスティにはそれを用意するだけの財力がない。
「先程も言ったが余・・・いや、私はそなたに礼を言われるような事など何一つしておらぬ」
「それでは私の気が済みません!私、浄化魔法が使えます!それで血塗れになったおじ様を綺麗にさせて下さい!!」
(お、おじ様!?十やそこらの子供にとって余は【おじ様】なのか!?)
グサッ!
「わ、分かった・・・。それでそなたの気が済むのであればそうするが良い」
見た目は二十代後半、実年齢は千歳越えの青年はセレスティの【おじ様】発言に心理的に大ダメージを受けたが、それを面に出す事なく浄化魔法で血塗れになってしまった自分を綺麗にして欲しいと頼む。
青年の答えに満足したセレスティは浄化魔法を使って一瞬でオークの血を浄化した。
(何だ?この人間の少女の力。寿命のみならず体力に魔力、身体能力に自己治癒能力・・・全てが妖魔に劣っているはずなのに、血に塗れていた余が一瞬で綺麗になった・・・)
「娘よ、感謝する」
「これくらいどうって事ありませんわ、おじ様」
(おじ様!?)
グサッ!
「お嬢さん・・・私の事は【おじ様】ではなくグレンヴァルトと呼んでくれぬか?」
「分かりました」
おじ様ことグレンヴァルトの顔を引き攣らせながらの頼みに肯定する返事をしてから名乗ったセレスティは、何の目的で森まで来たのかと尋ねる。
「ただ単に暇潰しで遊びに来ただけなのだが、私にとってのリュミエールに出会えた事が大きな収穫だった」
ズキッ
(この痛み・・・何なのかしら?リュミエール?グレンヴァルト殿のような金持ちの美形を恋人に持ったリュミエール殿は幸せでしょうね)
ほんの一瞬だが自分の胸に針が刺さったような痛みを感じたセレスティは敢えてそれを無視して森から去って行くグレンヴァルトを見送ってから、グレンヴァルトが倒したオークを解体し始める。
ふぅ~
「やっと終わったわ」
解体したジャイアントホワイトラビットとオークを売って換金する為に市場へと向かうのだった。
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