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2話
しおりを挟む今は物語の登場人物だけだが、何時かは自分の身の周りの男性で男同士の恋愛に結びつけてしまう!と判断した両親はセレスティを【薔薇の修道院】に入れる事にしたのだ。
薔薇の修道院というのは【愛】という花言葉が入る薔薇を象徴とし、聖女候補として名が挙がるレベルの魔力がある令嬢を聖女として相応しい女性になるように育成するのが目的の修道院だ。
表向きは・・・である。
だが実際は異なる。男同士の恋愛に夢中になっている令嬢が入る修道院なのだ。
修道院に入った令嬢は、俗世を絶つという意味を込めて長い髪を肩の辺りで切ってからベールを被り修道女の衣装を身に纏う。
修道院での生活は家事全般を自分達でこなすのはもちろんだが、自分達が食べる為の果物・野菜、薬用のハーブを栽培。
週に一度は礼拝堂で祈りを捧げに来た信者達の前で説教、患者の治療、後から入って来たシスター達の面倒を見る。
金銭方面に関しては親からの莫大な寄付もあるが、修道院の庭園の一角で栽培している薔薇を化粧品や香水、お菓子等に加工してそれを市場で販売。
それで得た金銭で動物の乳やチーズといった乳製品、主食であるパン・パスタ・粥を作る為の小麦粉に米といった穀物、卵に塩や胡椒といった調味料、茶葉やコーヒーといった嗜好品、鍋や包丁といった調理器具に皿やコップといった食器類、自分達の衣類を作る為の布といった生活必需品を購入。
これが薔薇の修道院での生活の基本である。
ちなみに肉と魚は市場で購入するという手もあるのだが、食べる事が出来るモンスターを自分達で狩った方が手っ取り早い。
だって食べる事が出来るモンスターを狩れば市場で肉を買わずに済んで節約にもなるし、オークの睾丸は精力剤の材料の一つでもあるので売れば金にもなる。それにモンスターを狩る事は即ち近隣の平和にも繋がるから。
平民に近い生活を送っていた男爵家・子爵家、由緒ある名門だが貧困に喘いでいる伯爵家・侯爵家・公爵家の令嬢であれば薔薇の修道院での生活は遥かに天国で暮らしていけるが、身の周りの事を全て侍女にして貰っている深窓の貴族令嬢にとってそれは厳しいものでしかなく、僅か二~三日で『こんな生活・・・もう耐えられないわ!!!』『薔薇の修道院で暮らすくらいなら男同士の恋愛に夢中になる事を止めた方がまだマシだわ!!!』と音を上げて還俗してしまうのだ。
セレスティは聖女候補になってもおかしくないレベルで膨大な魔力を有しているし、魔法にも長けている。何より資産を有する公爵家の令嬢として育っているのだ。
そんなセレスティが修道院での生活に耐えられるはずがない。
直ぐに音を上げると思い、両親はセレスティを薔薇の修道院に入れたのだ。
だが両親はセレスティの男同士の恋愛に対する情熱を舐めていた。
生活の糧の為、金銭の為にオークやコカトリスを狩るだけではなく、魔法を使っているとはいえ掃除・洗濯を完璧にやったり、料理を作ったり、刺繍は出来るが裁縫は出来ないのが当然の貴族令嬢が修道女用のベールと衣装を作ったり、後輩となるシスター達の面倒を見たり、修道院を訪れた患者の傷を治癒したり───。
まぁこんな感じでセレスティは薔薇の修道院での生活に馴染んでいるのだ。
薔薇の修道院の修道院長の話を聞いた両親はセレスティの適応力の高さに心の中で感嘆の声を上げたと同時に、我が子であれば今でこそ王妃だが実家は男爵家という女性を母に持つ(馬鹿な)王太子(15)の婚約者、何れは王太子妃として表向きは王太子を立てつつ裏では政治を動かすせるくらいのハイスペックなのに男同士の恋愛に夢中になっているのが唯一の欠点だという事実に───泣いた。
そりゃもう心の底から。
だがそれでも両親にとってセレスティは愛する我が子である事に間違いはない。
薔薇の修道院に多額の寄付をした両親はセレスティを頼むとだけ修道院長に伝えると公爵家へと帰るのだった。
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